内容説明
ロサンゼルスに住む日系人女性ジャッキー・イシダは、病没した祖父フランク・サカイの遺言状にでてくるカーティスという人物を探しはじめる。カーティスは、1965年におきた黒人暴動のさなかに、祖父の店の冷凍庫にとじこめられ命を落とした黒人少年四人のうちの一人だった。事件を調査する過程で浮かびあがる、若かりし日の祖父の姿とは…。日系人女流作家が、人種のるつぼL.A.の現代史を、過去と現在を自由に飛翔しながら圧倒的な筆力で描ききる、MWA賞候補作。
著者等紹介
ルヴォワル,ニーナ[ルヴォワル,ニーナ][Revoyr,Nina]
1997年、“The Necessary Hunger”でデビュー。第二作にあたる『ある日系人の肖像』で2004年度MWA賞の最優秀ペイパーバック賞にノミネートされた。東京生まれで、日本人の母とポーランド系アメリカ人の父を持つ。5歳でアメリカに移住。現在、ロサンゼルス在住
本間有[ホンマユウ]
英米文学翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
紅はこべ
28
主人公の法科大学院生の弁護士を目指す日系4世のジャッキーが生きる1994年と、彼女の祖父や叔母達が過ごした戦前戦中戦後の時代が、交互に、様々な人物の視点から語られる。アメリカでマイノリティとして生きる辛さは、今も昔も同じらしい。ジャッキー自身上昇志向の強いセレブであると同時に、日系人で同性愛者という二重のマイノリティ。とはいえ、戦前戦中の黒人と日系人の友情とか、人間って捨てたもんじゃないかもと思わせるところもあり。最終章が切ない。2010/03/08
松本直哉
23
謎の遺書を残して亡くなる温厚篤実な日系二世フランクの生涯を孫娘がたどり直すにつれて明らかになるのは、戦中の日系人の受けた過酷な差別で、彼の父は拷問死、自身も危険な最前線に送られて負傷する。彼だけでなく周辺の人物も、多かれ少なかれトラウマを負う日系人社会と並行して、60年代に別の意味で過酷な差別を受ける黒人社会の抵抗運動があり、やがて悲劇が起こるが、その裏には一つの秘められた恋があった。日系人と黒人、二人ともマイノリティ同士の若者の恋、それをたどり直す孫娘もまたレズビアンであり、幾重もの差別構造に目がくらむ2026/05/14
白玉あずき
19
差別されるマイノリティであることの苦しさや、生きる困難。怒りとプライド。丁寧に書きこまれた人々の姿が本当に読ませる。この作品をミステリーのジャンルに入れてはいけません。サラダボウルと評されるアメリカだが、永遠に差別し排除する人の心は無くなりそうにない。主人公が被差別人種であり、性的にもマイノリティに設定されながら、差別された経験のない「シーツのように真っ白な」苦労知らずに描かれているのも計算のうち。人間的に成長するとともに、人間社会の汚濁と、苦しむ人々への共感が育っていく様子が、ありふれているが良かった。2015/11/13
HIRO1970
6
★☆★ロサンゼルスの雰囲気を掴もうと思って、本書を読んでみました。祖父の遺書から始まり、最初はいやいやながら過去の事件の真相を調べ始めたロースクールの学生の孫娘ですが、過去の祖父世代の様々な差別問題や強制収容、従軍等の背景を交えながら少しずつ事件の核心に近づいていきます。女性らしい細かな観察力からくる表現力は主人公同様にレズだからなのかどうかは解りませんが、繊細な表現が非常に上手な作家だなとの印象を持ちました。2013/10/05
micamidica
3
日系アメリカ人の女性であるジャッキーの祖父がなくなり、ジャッキーが祖父にまつわる謎を追っていく…という物語。人種差別や戦争によって苦難を背負ってきた黒人、日系人のひとたちの描写が痛々しい。黒人警官トーマスの感じる怒りもわからないではない(彼のする行為は別として)。ジャッキーが同性愛者であることで焦点がぶれてしまうような気が個人的にはするのだけれど、作者はそうしたかったんだろうなぁと思う。ミステリというより、登場人物の人生を味わいたい小説だと思いました。最後がなんだか物足りなかったかな…。2016/08/30




