内容説明
「車引」の場で、梅王丸、松王丸、桜丸の三兄弟は赤い襦袢を来て登場する習わしであったが、松王丸を演じた五代目団十郎はある時白い襦袢を着て皆を驚かせた。その理由は何か?(「座頭の襦袢」)。「忠臣蔵」の四段目、主人との別れの場面で大星力弥が悲しそうに首を振る型がある。これを工夫したのは誰か?(「美しい前髪」)。劇評家として一家を成しながら江戸川乱歩の勧めによって推理小説を書き始め、直木賞、推理作家協会賞を受賞した戸板康二。本書はその著者にして初めて書きえた、歌舞伎ミステリの傑作である。
感想・レビュー
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こまったまこ
4
面白かったです。江戸時代の歌舞伎小屋を舞台にした謎解き話の短篇集です。一話ごとに歌舞伎の演目が主題になっていて、それにまつわるお話になっています。例えば忠臣蔵の四段目で力弥と判官の別れの場面で力弥が首を振るしぐさをするようになったのはこういうきっかけがあったからかもしれない、というような作者の推測と現在されている型が見事にマッチしていて楽しいです。本当にそうかもと思わせるような臨場感のあるお話でした。取り上げた演目の全てを観てみたいと思いました。2013/09/01
都布子
0
「名探偵雅楽シリーズ」で有名な著者(故人)の、歌舞伎の型に題材をとった短編集。実在の役者さんと架空の役者さんを絡めた人間模様が描かれます。血なまぐさい事件はありませんが、「日常の謎」的ミステリー色は濃いですね。元ネタの歌舞伎をしらなくても十分読ませてくれます。
いちはじめ
0
歌舞伎を題材とした時代ミステリ。謎解き物としては薄味だが、こういうのは戸板康二でないとなかなか書けまいと思わせる。2001/12/25
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