内容説明
私、椎名耕助は、大学の同僚・乙骨三四郎とともに避暑を兼ねて信州へ旅行することになった。だが、N湖畔に立つ鵜藤家の一室を借りた私たちが、そこで恐るべき殺人事件に巻き込まれることになろうとは!「悪」そのものを結晶化したような美少年・真珠郎。「血の雨が降る」と不気味な予言を口にする謎の老婆。巨匠・横溝正史が耽美的作風の頂点を極めた戦前の代表長篇『真珠郎』登場!他に由利・三津木コンビが活躍する「蜘蛛と百合」「薔薇と鬱金香」「首吊船」「焙烙の刑」の四篇を収録した怪奇ミステリ傑作選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マムみかん(*ほぼ一言感想*)
32
吉川晃司主演で「由利麟太郎シリーズ」がドラマ化されるというので、(ここに収録されている作品が選ばれるかどうかは分かりませんが)本書を読んでみました。 現代では考えられない悪逆非道な犯罪、耽美と怪奇のミステリーが5編楽しめます! トリックは突っ込みどころ満載ですが、人間の欲深さが招いた哀しい物語の数々を堪能しました。 由利先生の凄さは…いまいち分かりません(笑)☆ 2020/05/31
ホームズ
20
『真珠郎』がやはり良いですね(笑)他の短編もそれなりに面白ろかったと思います(笑)角川文庫ではもう読めなくなってる由利先生と三津木の活躍が読めるのが嬉しい(笑)本格推理とは違いますがこのシリーズもいいと思うんですけどね(笑)光文社が江戸川乱歩の全集出したみたいに横溝正史もどこかで出してくれないかな。文庫で(笑)2011/06/29
イシグロ
14
横溝正史、戦前の代表作。 信州の元妓楼を訪れた大学講師の椎名と乙骨。彼らは深夜、柳の木の下に佇む妖艶な美少年を見る。美しき殺人鬼、真珠郎は幻か、実在か。 他に由利麟太郎ものの短編を4編収録。 冒頭から、実に横溝的としか言いようのないビジュアル喚起力が炸裂。毒々しいまでに色彩豊かな「絵」が一章ごとに用意されているというサービスっぷりです。 怪奇な表層に本格ミステリの骨格が潜み、戦後の傑作群につながる原点が感じられます。 あと、やっぱりネーミング素晴らしいですよね。真珠郎、乙骨三四郎、鬱金香夫人、薔薇郎…。2019/09/16
nekosuke
6
5作品を楽しめます。いずれの作品も男女の機微がベースになっているように思え、行間を読むのが不得意な自身としては、少し難しかったです。最後にある横溝氏の[私の探偵小説論]に、"探偵小説はフェヤーばかりでは成立しない"とあり、これこそが横溝氏の作品の奥底を流れているんだな、と実感できる1冊でした。2014/01/06
moke
6
とてもとても面白かった!本陣殺人事件を読んだ時からすっかり心を奪われた横溝先生の二冊目。怪奇美。素敵。この奇怪で凄惨極まる世界に引き込まれるとどんなに登場人物が少なくてもとたんに用意された煙幕にまかれて最後に驚かされたり切なくなったり。表題の真珠郎なんていうやつはどんなに綺麗な題名でしょう!可哀想な真珠郎。横溝ワールドの魅力の一つだと思う、印象的な名称。それになんといっても巻末の乱歩さんや横溝さんの文が面白い。これだけの為にこの本買ってよかった程。こういう探偵小説論を書く横溝さんだから好き!!2012/02/02