内容説明
ダブル・スパイという後ろめたい過去に心身ともに疲れ果てていたローチェは、自由になる最後のチャンスとばかり新たな任務についた。かつての情報部員オードリーをRIP委員会に復帰させるのだ。ロシアの動向を調査することを目的とするこの委員会にとってオードリーの握っている文書は、なんとしても入手したい極秘資料だ。しかし、やっと接触したオードリーの手から資料は1日違いで、もとの持主である旧フランス情報局員ドーブロンのもとへ返されていた。イギリス、フスンスそしてソビエトの諜報部員の暗躍。疑惑が疑惑を生む信じがたいスパイたちの暗躍。国際色豊かな3人の美女たちを配して、風光明眉な南フランス・ドルドーニュ地方を舞台に展開するアントニイ・プライスの自信作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sohara
1
ようやくオードリー登場。ただし、話の展開は増々分かりにくくなる。鍵は、1957年当時の世界情勢。アルジェリア戦争とスエズ動乱、そしてソ連の「西の辺境地」ハンガリーの動乱。スエズ動乱なかりせば、英仏米がハンガリーを見殺しにはせず、第三次大戦となる可能性があった(!)らしい。なお、本書の語り手ローチェは、朝鮮戦争後の日本で婚約者を亡くすという設定だが、彼の日本観は芳しくない。「日本は美しく、日本人は親切で、平凡な国民である」だそうです。ともあれ、これにて本シリーズ既訳本は全て読了。残りは原書を読むしかない! 2012/11/02