内容説明
1957年のパリは、デイヴィッド・ローチェにとって居心地のいいところではなかった。イギリス情報部内のKGB要員として、上司を嬉ばすだけの働きのないローチェは、すっかりやる気をなくし、ハンガリーやスエズの動乱をまのあたりにしながら、そろそろ逃げだす潮時だと考えていた。そんな折もおり、ロンドンに新設されたRIP委員会が大戦中情報部員として活躍したデイヴィッド・オードリーを再度登用することを決め、この謎めいた異能の男の復帰を呼びかける任務をローチェに与えた。自分と同じ名前をもつデイヴィット・オードリーはいったいどんな男なのか。そしてRIP委員会とは…。名匠アントニイ・プライスが『ビンテージ’44』に続いて放つダブル・スパイを主人公とする欧米型サスペンス。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sohara
1
邦訳は1990年刊、原作は81年、そして物語の時代は57年。語り手は、英国諜報部のローチェ大尉。最初は馴染みの人物が登場せず、含みのある会話が続くため、話の展開が読めず戸惑う。30ページあたりでようやくオードリーの名が出て安堵。戦後学究生活に戻った彼を再度諜報部に引き入れるべし、と指示されたローチェによる、オードリー獲得作戦の顛末であると判明する。結局、上巻ではオードリー本人は登場しないのだが、彼の生育環境をローチェがたどるくだりが楽しかった。「ゲーム」という言葉、そしてキプリングの著作への言及も要注意。2012/10/25
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- 和書
- 影裏 文春文庫