内容説明
オオカミのゆめ―どこか遠い山の中で、オオカミがゆめをみていた。ゆめの中でオオカミは、一人の男の子になっていた。…ぼくのゆめ―ある晩、ぼくはゆめをみました。それは、こんなゆめでした。ゆめの中でぼくは、1ぴきのオオカミになっていたのです。…オオカミがぼくか、ぼくがオオカミか?夢と現実のあいだで〈変身〉を重ねながら、生きることの感覚を定着する、幻想ロマン!名作『風を売る男』につづく、得望の最新作品集!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らくだ
3
面白かった。トラウマ児童文学系統では有名な三田村信行の短編集。「生きる時間」で一旦三途の川から引き返した心中一家が「霊力」を得て幸せになるかと思いきや、そうはさせないのがこの系統の三田村信行。読ませる緊張感ある文章で、最後までノンストップで読めた。最後の「オオカミのゆめ ぼくのゆめ」は恐らく絶滅したニホンオオカミを題材にした作品で、この間読んだ「オオカミ少年の夜」と似たような筋書きでありながら、こっちのほうが謎を上手く生かしてあり、面白かった。教師が生徒を銃で撃つ辺り、かなり三田村信行だ。とてもよかった。2020/09/23
猫のゆり
2
子ども向けの本でこんなに救いがない話のオンパレードでいいのかな、と思いつつも楽しく(苦笑)読んでしまいました。ベストは「生きる時間」と「ゆめの村へ」なんだけど、これ一冊で確実に人生に対する諦観が形作られるだろうな、という点で中高年こそ教科書としたいような・・なんだか不思議な読後感でした。2011/05/21
すけきよ
2
日本全国のちびっ子を『おとうさんがいっぱい』で恐怖のどん底に陥れた(と噂される)作者の短篇集。児童書だからって、ほのぼのしていたり、教訓があると思ったら大間違い! 毎度、児童書かどうかは別にして、後味悪い作品ばかりだなぁ~。物語が終わっても人生は終わらず、ぽっかり開いた無力感は大人の方が色々思うものがあるはず。30年前に「砂の少女」読んでたら、絶対に砂場で遊ばなかったな。夢も希望もなさでは「生きる時間」がベスト。2011/04/15
fried_bogy
0
なんというか……すげえな。容赦ない。2014/03/30
優水
0
やわらかなタッチの言葉でえがかれた、かなしみの物語たち。「おばさんの庭」と「生きる時間」に描かれたよろこびと喪失は、じんわりと胸をえぐる。それでも、『にんげんとしての長い一生』を、歩むこと。そんなことを考えた。2012/09/29