内容説明
『アーサー王の剣』から『魔術師キャッツ』まで、現代を急ぎ足で駆けぬけたひとりの絵本画家の軌跡をたどる、はじめてのイラスト・アンソロジー。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
105
大判サイズ、フルカラーのエロール・ル・カインの紹介本。「いばらひめ」は、光も影も実に美しく、繊細かつ夢幻的だ。たしかに、ここでの斜めからの光はレンブラントを想わせるし、「キューピッドとプシケー」は、ビアズリーを、さらには「雪の女王」の1枚はブリューゲルを想起させる。必ずしも彼らから影響を受けたというのではないらしいのだが。東洋趣味の極致「まほうつかいのむすめ」の完成度の高さ、「キャッツ」の軽快、軽妙なタッチも忘れ難い。しかも、具象の中に抽象が潜むところがまたいい。しばし、ル・カインの幻想世界に陶酔する。2013/11/28
智湖@ベルばら同盟副会長
28
ただただその才能に驚嘆しました。なんて美しい世界。。✨✨2023/08/18
毒兎真暗ミサ【副長】
28
1980年代から活躍した鬼才エロール・ル・カインの画集。彼の手掛けた代表作「いばらひめ」を始め33作のイラストを紹介する。果てしない憂鬱に色をのせた御伽の世界から子供が喜ぶサンタクロースまで幅広い。特に初期作品は幾何学模様とシンメトリーが放つ神秘的な刺繍のよう。「東方へのまなざし」では芥川が描くような幻想的空間が広がり「クリスマス」には駐禁を切られるサンタとトナカイが悲哀する。晩年のイラスト変遷は宗教観が左右した苦悩の表れ。深海の美を覗くヒンヤリとした温かいカササギの眼差が心をキリキリと抉る甘美な作品集。2023/07/18
nyanco
21
『おどる12人のおひめさま』で図書館に予約したこの本。「この本で間違いありませんか。」と見せられた表紙のシャム猫を見た途端、ビビビ!と来ました。そのまま絵本コーナーへ。3冊の絵本も一緒にお持ち帰り。絵本などないアジアの国々を転々としながら成長したル・カイン少年。彼の頭の中には極彩色のイメージが膨らみ続けていたのでしょうか…。2009/08/11
宇宙猫
19
★★★★★ 一瞬、点描画かと思うような繊細な絵は、幻想的だったりコミカルだったりして美しく楽しい。でも、晩年の可愛らしいサンタや猫たちの絵が一番好き。1992年出版なのに「1993のクリスマス」に?と思ったけど、未来のクリスマスは世知辛いってことなのかな。2020/07/03