内容説明
父が北アルプスの山中で遭難した。その日から裕の生活はがらりと変わってしまった。裕の胸のなかの、不安定な居心地の悪さは、事故の原因がはっきりしないことにあった。裕は、遭難現場へ足を運ぶことによって真相を知ろうと決心する。けれど、西穂高の山小屋の主人は、裕に、大事なのはだれの責任かを探ることではなく、山を愛する気持ちを理解することなのだと教える。裕は、はじめて、山男の父の存在が自分のものになってきたような思いがするのだった。…遭難現場に残されていたという手帳とボールペン、そして一枚の写真が、思いがけず、裕をスイスの山々へと誘うことになる。…