出版社内容情報
幼い頃に住んでいたアパートの隣の住人が忘れられないユリ。毎日、部屋の鍵をかけずに出かけていくその隣人は自分に解放区を与えてくれたのだ。少女の遠い憧憬を描いた表題作ほか4編を収録。 2001年6月刊。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
masa@レビューお休み中
94
失うことは誰でも怖い。ましてやもう一度手にすることができないとわかっていたら…。その恐怖は計り知れないものがあるに違いない。この世が終わるという予言を聞いて優等生から不良になってしまう線一。田舎で農家うぃはじめるけど、人とうまく交わることができないちーちゃん。過去のトラウマからなのか告白された男子に家に鍵をかけるなと要求するエリ。それぞれが、何かを失う体験をする。世界であったり、大切な人であったり、かけがえのない空間であったり…。彼らにとっては唯一無二のものだからこそ、その喪失体験は大きいのかもしれない。2016/08/23
りりす
24
ファンタジー成分は少なめで、集団の恐怖、田舎の恐怖、老いの恐怖、都会の恐怖と言った感じの、あらすじを考えるとちょっと暗めな話が多かったかな…?『8月に生まれる子供』怖かった。ハッピーエンドにはなれない。ハッピーエンドどころか世間から見たら、かなり踏み外してる。世界とコミット出来ない。それでも世界に見捨てられない、不幸ではない。やりきった感がある。結構なお点前でした。love2018/08/13
おおた
18
1995年初版、学生時代に買って何度も読んだ。グー猫直前の個人的に大島先生の最高な時代の作品集。レンブラント光線もマリアージュフレールもここで知った。「クレイジーガーデン」の兄が結婚するとき嫁と「よろすく」とだけ挨拶する場面、「ロストハウス」のみごとに無視できてる場面、「青い固い渋い」の何一つ解決していないのにそれまでとはちがうラスト。すべてはあるがままで、世界はこうあってほしい。2020/05/15
スイ
12
大島弓子作品は、打ちのめされるのがわかっているのでなかなか手を出せない。 今回も表題作と「8月に生まれる子供」で頭撃ち抜かれた気持ち。 とても酷で、それでいて温かい。 痛みの余韻をいつまでも味わっていたい。2022/05/23
fumikaze
12
再読。表題の「ロストハウス」を含め6篇の短篇とあとがき漫画がおさめられている。どれも20年近く前の作品で、私が一番好きなのは「ロストハウス」だ。どうしてこんなに好きなのか考えても分からないけれど、とにかく惹かれる。実は私もこの鹿森さんみたいに昔から現在にいたるまで家に鍵をかけていない。そして (誰もいない) 家が好きだ。 『・・彼はついに全世界を自分の部屋にした。そしてそのドアを開け放った。』いい言葉だなぁ…2015/02/12