出版社内容情報
「たとえそのつぎ目が不格好でも、
つながっていられればそれでいいと思っていた。」
惣菜と珈琲のお店「△」を営むヒロは、晴太、中学三年生の蒼と三人兄弟だけで暮らしている。ヒロが美味しい惣菜を作り、晴太がコーヒーを淹れ、蒼は元気に学校へ出かける。
しかしある日、蒼は中学卒業とともに家を出たいと言い始める。これまでの穏やかな日々を続けていきたいヒロは、激しく反発してしまうのだが、三人はそれぞれに複雑な事情を抱えていた――。
傷つきながらも身を寄せ合って生きてきた三人が、
懸命に明日を紡いでいくための物語。
内容説明
惣菜と珈琲のお店「Δ」を営むヒロは、晴太、中学三年生の蒼と、きょうだい三人だけで暮らしていた。ある日、蒼は卒業したら家を出ると言い始める。ヒロは激しく反発してしまうのだが、三人は複雑な事情を抱えていた―。第11回ポプラ社小説新人賞受賞作。
著者等紹介
菰野江名[コモノエナ]
1993年生まれ。三重県出身。「つぎはぐΔ」にて第十一回ポプラ社小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ネギっ子gen
159
【おいしいという言葉は、いつでも私を助けてくれる】惣菜と珈琲の店「△」を営むヒロは、晴太、中3の蒼と3人だけで暮らす。不器用でダブルワークが出来ないヒロが美味しい惣菜を作り、春みたいに朗らかな晴太が接客しコーヒーを淹れ、社交性のある蒼は元気に学校へ。蒼は中学卒業したら家を出たいと――。<私も晴太も、蒼の親ではない。親代わりなんて思ったことはない。そんな大きくて温かくて、なんでもしてあげられるような存在になれたらよかったけど、私たちは支え合う小さな子どもたちのままふたりだけが先に大人になったのであって>。⇒2023/05/12
Karl Heintz Schneider
156
三人の兄姉弟は力を合わせて惣菜店△(さんかく)を切り盛りしている。でも三人に血のつながりはなく、それぞれに複雑な生い立ちをかかえており・・・。「私たちは必死に家族であろうとして、たとえそのつぎ目が不格好でも、つながっていられればそででいいって思ってた。」つぎはぎだらけの血縁のない三兄弟、ほころんだら、またつぎはげばいい。末っ子を守ること、育むことが兄と姉の生きがいであり、プライド。ふたりに迷惑をかけたくなくて自立を目指す末っ子。不器用ながら、お互いを思いあう三兄弟の気持ちが伝わってきて爽快な読後感だった。2023/05/09
tetsubun1000mg
146
ほのぼのとした表紙に惹かれて選ぶが、想像もつかないような意外な展開を見せる小説。 若い二人が総菜を作って売り、中学生の弟がいるという設定から始まる。 お店が気になる常連客が現れたり、総菜を造る様子が描かれたりとして進行しながら、3人の兄弟の関係が少しずつ明らかになってくる。 今どきの若者では思い当たらないような生い立ちや育て方をされている3人それぞれの思いが描かれているのだが、以外にずっしりとした重さも感じられる。 3人が兄弟のため、自分のために成長していこうという方向に向かうのは清々しくもある。2025/04/28
シナモン
128
身勝手な親の都合で「家族」として暮らす晴太、ヒロ、蒼の3人。惣菜店を営み、ささやかな幸せのなか暮らしていたがいつしかその関係性にも変化が訪れて…。いびつな形の家族のなかで育った蒼の明るさ、朗らかさ。ひと一人が大人になるには大変なことも沢山あるだろうし、こんなにうまくいくかな?という思いもあるけど、これも立派な家族の形なんだろうな。何より、蒼の健やかな成長がそれを証明してる。彼らをそっと見守るお客さんたちの存在も大きい。家族の形はいろいろ。彼らなりの幸せの形を見つけていってほしい。2023/04/16
道楽モン
124
ポプラ社の新人賞は、もっとジュブナイル寄りと勝手に思っていたが、それは私の偏見でした。すまぬ。疑似家族という設定に、三人家族それぞれが、人生の最初の岐路において各自の落とし前をつける話。新人賞応募作ながら意欲的な作品で、読み応えがあった。とはいえ既成の同一テーマ作品から頭ひとつを抜け出せていないのが残念。処女作として手堅さは感じるが、もっと熱いものが欲しい。刑事をはじめとして魅力的な脇役を複数作れるのは、この作者の強みでしょう。次作に期待。バケるかも。2023/04/20