出版社内容情報
男子高校生・夕作(ゆさ)まことは、顔の痣をかくすために祖母から教えてもらった化粧をして生活している。それがばれることを恐れ、誰ともかかわらず平坦な日々を静かに過ごすことを望んでいた。
ある日、新聞配達のアルバイトの帰りに、公園でクラスメイトの女子生徒・槙野がタバコを吸っているところを目撃してしまう。不良でもない槙野がタバコを吸うのには、なにか理由があるらしい。偶然にも夕作が化粧をしていることを槙野に気づかれてしまい、互いに“秘密”を共有した二人は、徐々に距離が近づいていく――。
繊細な少年少女の心を丁寧に描き、第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した感動の青春小説。
内容説明
男子高校生の夕作まことは、顔にある痣を祖母から教わった化粧で隠して生活している。それがばれることを恐れ、誰にもかかわらずに過ごすことを望んでいた。ある日、新聞配達のアルバイトの帰りに、夜明け前の公園でクラスメイトの女子・槇野と出会う。互いに“秘密”を抱えた二人は徐々に距離を近づけていくが―?第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した感動の青春小説。
著者等紹介
北原一[キタハライチ]
1995年、東京生まれ。武蔵野美術大学卒。グラフィックデザイナー。2019年、本作にて第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
40
顔の痣を隠すため、祖母から教えてもらった化粧をしてひっそりと暮らす男子高校生・夕作まこと。彼がバイトの新聞配達の帰りに、公園でタバコを吸うクラスメイトの女子生徒・槙野と出会う青春小説。何やらワケありのような槙野と、お互い踏み込まないまま話す機会が増えてゆく夕作。槙野を通じて広がってゆく交友関係と、偶然知ってしまった彼女が抱えている苦悩。臆病だった夕作の背中を押してくれた槙野もまた誰にも言えなかった孤独を抱えていて、そんな彼女のために勇気を出して向き合おうとする夕作の不器用な優しさがなかなか良かったですね。2022/12/06
akiᵕ̈
38
顔に生まれつきの痣を持ち、それをひたすら隠して誰とも交わらず平穏に過ごす事を望む夕作と、夜の公園でタバコを吸い、友達の前では明るくあっけらかんと装う槙野。こんな2人が出会い、愛情とは違うもので惹かれ合っていったのは似たもの同士であり、見たくないものを心の奥に蓋をしてしまってきているから。2人の境遇は違えど、子供の頃に受けた心の傷はとても深く深く、今も狂おしい程に戦い続けている。そんな2人にも優しく見守ってくれる仲間ができ、自分の本心と素直に向き合っていく。とっても温かいものが込み上げてくるラストだった。2023/04/11
WIND
7
人に言えない秘密を抱えた2人の関係性を描く青春小説。高校生同士の言葉で言い表せないような関係をうまく文章で表現していて、懐かしくなった。 主人公がとても優しく誠実で、こんな考え方ができるといいなと思った。 個人的に空気感がとても好きな小説だった。2024/10/23
みやしん
4
自分に無いコンプレックスに「気にするな/差別なんて幼稚なヤツしかできない」と諭そうとする行為は簡単で残酷で欺瞞だ。トラウマに満ちた主人公の心を溶かしていく周囲の人々の優しさが全編を覆う。映像化に向いた思春期小説。こう言ってはなんだけど、父親とは終生分かり合えないんだろう。2025/01/01
晴
4
過去の辛い経験から顔にあざがあることを隠して他人とも距離を取ってきた夕作くんと、偶然公園で未成年喫煙を発見されてしまった槙野さん。それぞれが抱える秘密の共有関係を描いた青春小説。槙野さん経由でなかよくなった遠藤くん、野中さん、竹田さんがいい子たちすぎて震えてました。槙野さんのようにひとに優しさを分け与えられる人ほど、だれよりも多くの傷を抱えているのかなと思わされるような作品。野原先生の「君は自分を心配してくれている人のこと、ちゃんと考えたことある?」という言葉はぐさりときました。2024/11/13