出版社内容情報
出版界で大注目の新鋭・岩井圭也が、子どもたちを取り巻く現状と未来を描き出す、感動のヒューマンドラマ。
僕は、あの頃の僕を救えているだろうか。
過去の経験を通して、付添人(少年犯罪において弁護人の役割を担う人)の仕事に就いたオボロ。彼に舞い込む依頼の先では、簡単には心を開かない、声を上げる方法すら分からない子どもたちが、心の叫びを胸に押し込め生き延びていた。オボロは、彼らの心に向き合い寄り添う中で、彼らとともに人生を模索していく――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
216
『ぼくはあの頃のぼくを救えているだろうか』自らが少年院で2年弱を過ごした過去を持つ弁護士・オボロ。家族だからというだけで言いなりに愛さなくてもいい。我が子だからというだけで縛ってはいけない―子供担当弁護士・朧が関わることになった少年審判。連作5話そのどれもが心に痛い。私も子どもの頃があった。子を持つ親でもある。何かがちょっと違っただけでこの子らや、この親だったのかもしれない。ハッキリしてることは彼らにオボロがいてくれて良かったって事。みんな頑張れと願う。岩井さん、これはもうシリーズ化希望だ。お薦めです。2022/10/14
のぶ
179
少年審判について色々と知る事ができた。被疑者、加害者側には、弁護人、身元引受人、後見人がいて、未成年を弁護する人を付添人と呼ぶ。5つの話が収められているが、いずれも付添人のオボロは、子どもたちの将来より、まず過去を探る。子どもたちに目線を合わせても、結局子どもの理解はできない。オボロは子どもと同じように同じものを見て、自分なりに子どもの立場になっている。舞い込んでくる事件は一筋縄ではいかないし、事情は様々だけど、懸命に問題に立ち向かうオボロの姿に胸を打たれた。どの話も明るい未来が見えて良かった。2022/10/14
名古屋ケムンパス
167
じんわり温もりを感じる作品です。「付添人」を担う弁護士オボロさんの非行少年らに向けた温かなまなざしに読者まで心が癒されます。作品では、更生の途を歩む少年たちにとって自らの能力を発揮する機会が奪われないことが、社会全体にとっても大きな意義があることが優しく優しく語られるのです。良書。2025/05/23
ムーミン
163
読んでよかった作品です。弁護人だけでなく、子どもには付き添う人が大切であり必要だと再確認できました。幸せの実感はなくても恵まれた環境の中で育ってきた人間には想像もつかない環境の中で生きてきた大人には、子どもと向き合う際に見えない、想像できない部分がどうしても生まれてしまう。それでもこうした作品を読むことを通して想像できる自分になる努力は続けたいと思いました。2023/05/05
モルク
163
「付添人」とは少年犯罪の弁護人であり、審理を受ける少年の権利を守り代弁する人のこと。その付添人であるさえないアラフォーの弁護士朧を主人公として少年犯罪に取り組む5つの連作短編集。少年事件の多くは大人、それも親とのかかわり合いが大きく影響している。そんな少年たちに真摯に向き合う朧。彼自身も親の片棒を担ぎ少年院に入っていた過去を持つ。それだからこそ気持ちを理解し、真正面から向き合い、彼らの心に本当の言葉を伝えられるのだと思う。少年事件というより親子を考えさせられる作品だった。2022/12/30
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