出版社内容情報
増山 実[マスヤマミノル]
著・文・その他
内容説明
「彼」は、いったい何者か?かつて京都に「河原町のジュリー」と呼ばれる有名なホームレスがいた。無数の視線に晒されても悠然と目抜き通りの真ん中を歩き、商店街の一等地で眠る男。出会った人々は、そのたび新たな物語をまとわせ、彼は街の伝説と化していく―。あの頃、京都の路上に生きた、伝説の男の物語。
著者等紹介
増山実[マスヤマミノル]
1958年大阪府生まれ。同志社大学法学部卒業。2013年、第19回松本清張賞最終候補となった「いつの日か来た道」を改題した『勇者たちへの伝言』でデビュー。同作は2016年、「第4回大阪ほんま本大賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
Kei
145
かつて、京都に実在した浮浪者、河原町のジュリーを取り巻く物語。管内の警察署員、バーを経営している写真家、鳥獣屋に通う少年。あの時代に、彼と生きた人の数だけの、彼の物語。抵抗できない理不尽に絶望し、それを許し忘れ、今を享受するだけの世の中や世間の人々から、ジュリーは背を向け、ステージから降りた。そして、たったひとつの確かなもの、だけを頼りに、その街を歩いた。そのたった2ページの、あの時代の、あの街の、描写に、私、泣いてしまいました。人間の尊厳を問う作品。あの頃、私も、ジュリーとすれ違っていたかもしれません。2021/08/23
昼寝ねこ
124
1960〜80年代にかけて京都河原町の路上を徘徊していた伝説の浮浪者(通称:河原町のジュリー)と彼の存在を受け入れていた京都市民の姿を京都三条京極交番巡査の目を通して描く。時代設定は1979年で全盛期の沢田研二、山口百恵や当時の新京極付近の風景や習俗が出てくるので60代以上の人は懐かしく感じると思う。河原町のジュリーは実在の人物。エピソードは史実を踏まえてはいるが恐らくフィクションだろう。ラスト近くのジュリーの戦争体験の話は蛇足に感じた。なぜそれまでの小説世界を壊すような話を挿入したのかと残念に思った。2026/04/01
fwhd8325
109
増山さんの作品には、いつも共通した世界を感じます。それは、忘れてしまったもの、失ってしまったものです。それは記憶であったり、心であったりします。だから、増山さんの作品を読むと切なくなったり、懐かしくなったりします。この作品は、実際にいた「河原町のジュリー」を主人公にした物語です。彼を通して戦争の悲惨さや、経済成長という名目で見失ったものが鮮明に浮かび上がります。それでも、私たちは「あの時代はよかった」 と感傷に浸ってはいけないのでしょうか。2021/04/25
里愛乍
89
知る人ぞ知る河原町のジュリー、彼を取り上げたというよりは、彼の居たあの空間を人々を描いている。平成になり令和になり、あの頃とはさっぱり変わってしまったけど、自分でもびっくりするくらいページをめくればめくるほど、読み進めていけばいくほど、あの頃の風景が数珠繋ぎに蘇ってきた。スカラ座や京都花月、駸々堂に十字屋、終盤に彼が語る三条新京極から連なる店は今歩いていても目に浮かぶようだ。正直ずるい、と思った。こんなん、読んでて好きにならへんわけないやん。買ってよかったと心から。2021/05/03
ぶんこ
85
素晴らしかったです。1979年の京都京極界隈に実在した浮浪者ジュリーと、その年に交番勤務の新米巡査になった木戸の日々。観光客も多い新京極の人混みに、見るからに浮浪者のジュリーが容認されていたということに驚きました。コソコソせずに泰然としていたからなのでしょうか。木戸巡査の教育係ともいえる山崎巡査長の人柄が素晴らしくて、これは木戸にとっては辛い少年時代を補ってあまりあったのではないか。国体開催ということが、その地の開発の原動力だとは驚きでした。人の尊厳とは何かを山崎・木戸ペアに教わったような気持ちです。2021/09/18
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