出版社内容情報
前川 ほまれ[マエカワホマレ]
著・文・その他
内容説明
人を依存症にするのは、快楽じゃないよ。心身の痛みや、それぞれが感じている生きづらさが原因で依存症になっていくの。ここは、生きづらさを抱える女性たちが前を向くための場所。今最注目の作家が、人間の孤独と再生にやさしく寄り添う感動作!
著者等紹介
前川ほまれ[マエカワホマレ]
1986年生まれ、宮城県出身。看護師として働くかたわら、小説を書き始める。2017年、「跡を消す」で、第七回ポプラ社小説新人賞を受賞し、翌年デビュー。第二作『シークレット・ペイン 夜去医療刑務所・南病舎』が、第二十二回大藪春彦賞の候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
モルク
114
ギャンブル、窃盗、薬、アルコールなど様々な依存症の女性たちが暮らす自助グループ施設。施設で暮らす人やその家族そして生活補助員の塩塚を描く連作短編集。その合間に出てくる主婦がアルコール依存性になっていく話に引き込まれる。そしてそれが意外な形で関連する。生き辛さや身体や心の痛みを忘れるため陥ってしまう罠。今日はやめよう、でもあと一回(一杯)だけ…そしてもう一回(一杯)だけ…ドミノのように生活、家族が巻き込まれる。一生闘いつきあわなければならない依存性。そこが一番怖いところ。重いテーマだが読んでよかった。2021/06/17
ゆみねこ
93
アルコール・薬物・ギャンブル・摂食障害からの窃盗症。様々な依存症と向き合い自立を支援する施設「セゾン・サンカンシオン」そこで暮らす女性たちと生活指導員。各章の間の#の構成が絶妙。依存症は家族を巻き込み迷惑をかける病気。巻き込まれる家族も辛く苦しいし、寂しくて生きづらい人が依存症になる。重苦しい読書になったけど読んで良かった。2021/08/29
ゆのん
87
テーマは『依存症』。ほとんど知らなかった依存症という病。読んでいてずっと胸が苦しくなる程の実態を知る事が出来た。とは言っても何の依存症も経験していないのだから真に知ったとは言えない。それでも依存症という病を知る事、辛さを想像する事や、偏見を持たない事は出来るのでは。依存症を抱えている人は決して弱いからではない。むしろ、周囲の人間は何をしていたのか…。心が砕け散る程の苦しみ、依存症と戦う苦しみ、周囲に理解されない辛さ、そして自己嫌悪の連続。読んでいて、心の悲鳴に耳を傾けてと叫びたくなる。2021/04/16
そら
78
悲しかったし、苦しかった。アルコール、ギャンブル、窃盗、薬物…様々な依存性に向き合いながら、共に更正するための施設「サンカンシオン」で暮らす女性たちの物語。私の身近では依存性患者はいない。そういう人たちがいることを知ってはいるが、"病的だ"と眉間にシワを寄せても"病気だ"と理解してあげることはやはり難しい。止められないのは自我が弱いからとか、自分のせいでしょと在り来たりな感情が出てしまう。でも、こんなにも苦しく辛い"病気"が人生を壊してしまうなんて、ただ悲しく思う。心の病は難しいが、知ることで理解したい。2021/06/22
ネギっ子gen
78
施設「セゾン・サンカンシオン」は、様々な依存症に苦しむ女性たちが共同生活を行いながら、回復に向け歩んでいくための場。そこの生活指導員・塩崎美咲を軸に、年齢も依存対象もそれぞれ違う女性が登場。彼女たちは心が深く傷つくことで、生きづらさを抱えていた――。抗酒剤を内服しながらもスリップした女性のことを想い、塩崎は言う。「ある種の自傷行為かもね。辛い出来事に折り合いをつけて、明日もまた生きていくため/今日を生き延びるために、そうするしかない人もいるから」。心が痛いから、自傷行為に走って、心の痛みから逃げる……。⇒2021/06/13