出版社内容情報
男子高校生・夕作(ゆさ)まことは、顔の痣をかくすために祖母から教えてもらった化粧をして生活している。それがばれることを恐れ、誰ともかかわらず平坦な日々を静かに過ごすことを望んでいた。
ある日、新聞配達のアルバイトの帰りに、公園でクラスメイトの女子生徒・槙野がタバコを吸っているところを目撃してしまう。不良でもない槙野がタバコを吸うのには、なにか理由があるらしい。偶然にも夕作が化粧をしていることを槙野に気づかれてしまい、互いに“秘密”を共有した二人は、徐々に距離が近づいていく――。
繊細な少年少女の心を丁寧に描き、第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した感動の青春小説。
内容説明
男子高校生の夕作まことは、顔にある痣を化粧で隠して生活している。それがばれることを恐れ、人とかかわらず静かに過ごすことを望んでいた。ある日、公園でクラスメイトの槇野がタバコを吸っているところを目撃する。不良でもない彼女がなぜ?互いに“秘密”を抱えた二人は徐々に距離を縮めていくが―。第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞した感動の青春小説(『シガーベール』を改題・加筆)。
著者等紹介
北原一[キタハライチ]
1995年、東京生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒。グラフィックデザイナー。『ふたり、この夜と息をして』にて第9回ポプラ社小説新人賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
160
顔の痣を隠すために化粧をする男子高校生の視点で語られる隠れて喫煙する女子との秘密の共有。「自分を心配してくれる人のこと、ちゃんと考えたことある?」—交友関係の広がりがもう一つの主軸で、取り巻くクラスメイトはついた嘘の数だけこちらが傷つく程のお人好し揃い。見守る養護教諭も重要なテーマを担っている。丹念に描かれた感情の機微は周囲の懐の深さだけで十分引き立つが、秘密の勿体ぶった演出や表現がいささか大袈裟。「人って、優しい人がそばにいると、優しくなれるんだよ」—好きな人だけでなく、そんな人に出会えた自分も大切に。2021/11/25
おしゃべりメガネ
145
今年読んだ本で間違いなくぶっちぎりのダントツで1位の作品です。本作には不思議な`吸引力`みたいなモノを感じ、読み始める前から輝きみたいなモノを感じてましたが、まさしく予感的中でした。顔に痣のある男子「夕作」はバイトの新聞配達の帰りに同じクラスの女子「槙野」が公園でタバコを吸ってるトコを目撃してしまいます。その出会いから、人と人との繋がりをこんなにもステキに綴る作家さんがいるとは、ひたすら驚きです。人によって様々なコンプレックスのカタチが書かれてますが、こういう作品にこそ『本屋大賞』を受賞してほしいです。2021/11/07
モルク
124
夕作は顔に痣があり、そのために小さい頃から酷いいじめにあっていた。高校入学で祖母の家に移り、痣を化粧で隠していた。隠しても、今にみんなに知られるのではと、全てに消極的でひとりぼっち、保健室にこもることが多かったが、何か秘密を持つ同級生槙野と知り合い、彼女との交流が夕作を次第に変えていく。人との距離をうまくとることができなかった夕作に、遠藤などのよき友人そして保健室の野原先生が手を差しのべる。彼ら高校生の繊細な心の動きがよくあらわれていてグッと心に迫る作品。表紙の神木隆之介君の写真もいい。2022/04/15
ゆみねこ
117
読み友さん絶賛の本作、とても良かった!顔にアザがあるため壮絶なイジメに遭い、化粧で隠している夕作まこと。人と関わらないように静かに学校生活を送る彼はクラスメイトの槙野がタバコを吸うのを目撃する。不良でない彼女は何故タバコを吸うのか?互いに秘密を抱える二人が距離を縮めて行く。おばあちゃんや保健室の野原先生、遠藤くんたち、良い理解者が周りに居てくれて夕作の未来は明るい。北原一さん、初読み。2022/02/01
chimako
107
顔にアザの有る夕作、家族に恵まれなかった槇野。ただの級友だった二人がある日公園で出会う。朝刊配達終わりの夕作が見たのは物憂げにタバコをすう槇野だった。子どもは無邪気に夕作を異物と認識し、少年たちは確信をもって傷つける。そうして外に出られなくなった夕作は祖母に預けられ、化粧でアザを隠すことを教わり学校に通う。人と触れ合わず何事も起こさず関わらず日々をやり過ごす。多目的トイレで落としたコンパクトを槇野が拾った事から二人の会話が生まれ、周りを少しずつ巻き込み世界が広がる。槇野の秘密は切ない。きっと未来はあるよ。2022/02/19