出版社内容情報
女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしい――
坂本龍馬、板垣退助らが活躍した時代、高知に楠瀬喜多という女性がいた
男も女も、民衆には多くの権利がなかった頃、高知で女性参政権を求めて申し立てをした楠瀬喜多。江戸から大正にかけて生き、世界でも早い時期に声を上げた彼女は、板垣退助ら男性の民権家が活躍した激動の時代に、何を見て、何を感じていたのか。そしてそのまなざしの先にあったものは――
100年後の今のわたしたちが手にしているものの大切さに気づかされる、著者初の評伝小説
内容説明
女も住むこの国のことを、女抜きで決めないでほしい。男も女も、民衆には多くの権利がなかった100年以上前、高知で女性参政権を求めて申し立てをしたひとがいた。『きみはいい子』『世界の果てのこどもたち』の中脇初枝が描く、楠瀬喜多の生涯。
著者等紹介
中脇初枝[ナカワキハツエ]
徳島県で生まれ、高知県で育つ。高校在学中に『魚のように』で坊っちゃん文学賞を受賞しデビュー。2013年『きみはいい子』で坪田譲治文学賞を受賞。2014年『わたしをみつけて』で山本周五郎賞候補、2016年『世界の果てのこどもたち』で第13回本屋大賞3位、吉川英治文学新人賞候補、2023年『伝言』で山田風太郎賞候補。絵本や昔話の再話も手掛ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
163
中脇 初枝は、新作中心に読んでいる作家です。著者初の評伝小説、本書で楠瀬喜多という女性民権運動家を初めて知りました。幕末から大正の激動の時代に生きた楠瀬喜多を魅力的に描いています。楠瀬喜多が、日本の現状を知ったら、大いに嘆くのではないでしょうか❓ https://www.poplar.co.jp/book/search/result/archive/8008186.html2025/04/21
いつでも母さん
127
朝ドラ『らんまん』で島崎和歌子さんが演じた楠瀬喜多と言う女傑の一代記を熱く読んだ。『民権ばあさん』高知と言う土地柄、何より板垣退助をして「同士」と呼ぶ魂の繋がり。夫·實との愛··100年以上前の時代とは言え、凄い女性が居たものだ。友情、学び、次の誰かのために··中脇さん、お見事の感じだった。2025/03/23
ゆみねこ
82
今の世の中も決して女性の地位は向上していないと思うけど、江戸から明治の女性たちの地位の低さに愕然とする。公の場で「女は脳漿が少ないから」と言われていたとは。朝ドラ「らんまん」で島崎和歌子さんが演じた《民権おばさん》、楠瀬喜多さんの生涯。板垣退助を同志と呼び、私財を投げうち恵まれない人々を救い続けた。土佐のおなごたちの心意気が女性参政権へと。とても読み応えのある1冊でした。2025/06/17
のぶ
76
女性参政権を勝ち取ろうと声を上げ続けた楠瀬喜多の生涯を描いた評伝小説で、ひたむきな生き方に心を打たれた。土佐の高知に富裕な商家の長女として生まれた喜多は、向学心に溢れ、おなごだからという理由で勉学の道を閉ざされたり、男の決めたことにただ従うというような生き方は、どうしても肯んじなかった。当時は「婦女は脳漿が乏しい」という暴論がまかり通る世相だった。欧米でも殆ど女性に参政権が認められていなかった時代、喜多の先取の精神、その胆力は素晴らしい。板垣退助の生涯も並行して描かれていて、読み応えのある作品だった。2025/04/17
fwhd8325
65
楠瀬喜多さんの物語ですが、板垣退助の物語でもあります。私は、この時代の歴史が一番好きで、日本がとても輝きを持っていた時代のように感じています。この時代にと言う人物が必ず存在していて、喜多さんもそのひとりに違いありません。とても読み応えのある作品です。2025/06/12