出版社内容情報
終戦直前、焼け跡から助け出された赤ん坊。
長じて報道写真家となった彼女が目撃したものは――
ひとりの女性の人生とともに、戦後日本、そしてアメリカの姿を描き出す感動作。
◆物語◆
第二次世界大戦末期、焼け跡の瓦礫の中から助け出された赤ん坊、茉莉江は、十歳になった年に母と二人、船でアメリカに渡った。
茉莉江は、自らの手で人生を切り拓いて報道写真家となり、人間の愚行と光を目撃していく。
時代の波や環境に翻弄されながらも、人を愛し、真摯に仕事に向かった女性の命の物語。
内容説明
終戦直前、焼け跡から助け出された赤ん坊。長じて彼女はアメリカに渡り、人間の愚行と光をその手で切り取っていく―著者の新境地にして最高傑作。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年岡山県生まれ。1993年に第12回「海燕」新人文学賞、2005年に『欲しいのは、あなただけ』で第12回島清恋愛文学賞を受賞。米ニューヨーク州ウッドストック在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
194
【初読み作家さん】ものすごい読み応え。戦後の日本(世界も少々)の歴史を知るにはいい作品でしょ。「カメラマン(ウーマン?)」という職業を選んだ作者の意図はおそらく正解。でも私には物足らない。まず、次から次へと変化する視点。そのくせ主人公・茉莉江と主な語り部・美和子の接点が最後まで明かされなかったこと。いろんなことが盛りだくさん過ぎて、作者ご自身も視点が絞れなかったんでしょうか。世界は醜いこと、乱暴なこと、悪いことで満ち満ちている、というテーマだけはしかと受け止めました。茉莉江の観点のみで読みたかったですね。2015/08/19
おしゃべりメガネ
151
我ながら、読了するのに時間を要した手強い?作品でした。う〜ん、素晴らしい作品であることは間違いなくヒシヒシと感じるのですが、どういうワケかあまり作品にのめりこんでいけませんでした。作風なのか、本作が醸し出すテンションの低い感じが、多分今の自分のコンディションにフィットしなかったんだと思います。違う場面やタイミングで読んだら、また違う印象を抱き、感想をもつことができるのかもしれません。現在と過去を行ったり来たりする展開が、もう少しメリハリつけば読みやすく、引き込まれ、物語に没頭し楽しめたかもしれません。2015/03/05
風眠
145
小手鞠るいと言えば切ない恋愛小説というイメージだったが、本作品はそういうイメージを覆した作品だ。読み終わったあと、戦争について、人の心にある善と悪について、頭と心の中を整理するみたいに、独り言が止まらなくなって、そしてラストの「私のてのひらのなかに、声がある。」で始まる文章を何度も読み返した。報道写真家・茉莉江とその家族、恋人、友人が語る戦争というもの。そこに恋愛や日常を絡ませることによって、戦争のもたらす悲劇性が「一般化」されることなくリアルに迫ってくる作品となっている。付箋だらけ、かけがえのない一冊。2014/07/26
いつでも母さん
142
小手毬さんの作風って、こんなんでしたか?これは代表作になるだろう!って私は今頃の読書(汗)フィクションなのだが、そこに存在していたのかと錯覚する事件の数々。登場人物が語る『茉莉江』が私の胸に迫る。多少、その関係者達の語りが行きつ戻りつで読みづらかったりもするのだが、そこはこの作者の想いが勝り引きこまれて読了に至る。『茉莉江』の首筋のケロイドが『茉莉江』が助けた子に確認されてしまう・・これは『啓示』なのか?そして「人の本質は悪‥」の『茉莉江』の言葉が刺さらない人間がいるだろうか?今頃ですがお薦め本です!2015/08/17
ケンケン
130
(467冊目)初・小手鞠作品。報道写真家となった女性の波乱に満ちた生涯を、ある女性の視点と当事者による視点によって描きつつ、戦争と平和、人類の罪と罰、未来への思い、大戦後の世界史…など織り交ぜながら紡ぎ出された重厚な物語の世界へと一気に惹き込まれる。 アップルソングの題名通り、重要なシーンに登場する林檎の存在感も印象的。 そして、無性に写真への興味が湧いてくるのであった。 近年稀にみる掘り出し物な良作でした!! 2016/04/18