出版社内容情報
終着駅は記憶の中――想い出はいつも、車窓のむこうで揺れている。鉄道を巡る物語に胸が切なくなる、珠玉の短編集。
内容説明
揺らめく記憶への旅。喪くしたものは何だっただろう―大崎善生が描いた、切ないけれど温かい、鉄道にまつわる短編集。
著者等紹介
大崎善生[オオサキヨシオ]
1957年、札幌市生まれ。2000年、デビュー作『聖の青春』で新潮学芸賞を受賞。2001年『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞、2002年、初めての小説作品『パイロットフィッシュ』で吉川英治文学新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おしゃべりメガネ
132
村上春樹さんテイストな作風が魅力的な大崎さんの短編集です。文字を読んでいるのですが、まるで絵本や写真集を手にとっているかのような錯覚に陥る稀な作家さんです。北海道出身というコトもあり、作中に北海道に関連することが引用されているのも、作品を手にとる魅力でもあります。作品のカラーとして、あまり抑揚がないのが人によっては退屈に感じるかもしれませんが、ノンビリと読むにはうってつけの作品でした。鉄道ネタもさりげなく絡ませてきているので、そういった描写も作品を美しく仕上げている要素かと思われます。穏やかに読了でした。2018/04/20
90ac
35
鉄道話が10話。前半の短編は短すぎて物足りないですね。後半の作品の方が入り込めました。表題作は程よい長さでまとまっていて印象的な内容でした。「キャラメルの箱」がきれいですね。これが一番好きです。全体的に大崎さんの思い出を作品にしたような印象を受けます。東京で学生生活に挫折して将棋に嵌ってしまう話や、医師の父の話なども実話なのではないかと思いました。禁煙の話も真に迫っていてこれもご自分の話なのではないかと思いました。最終話以外は鉄道が登場しますが、やはり体験からでしょうかカシオペアの話が印象的でした。2016/03/05
ワニニ
18
最近は、電車に乗っても、本を読んだり携帯いじったりして、窓の外を見ることがあまりない。この本は、男性が電車に乗って、あ~そういえば前に乗った時は…等感傷的になる、そんな短編が集まっている。冷静に考えると、冴えない男が非常に美化された自分の昔に思いを馳せ、切ない気持ちになる様は、キモチ悪いような、古臭いような~だが、そこは大崎さん。本の表紙のように、美しく深い海でふわふわ浮いている感覚になるのが不思議。若干独りよがりな印象も残る中、禁煙の話はちょっと面白かった。私も、たまにはぼーっと外を眺めようか?危険? 2014/05/27
onasu
16
あの時乗った列車で…。遠くでも近くでも、誰にでもありそうな、ふと思い出すシーン。一緒に乗っていた人、行き違いになった相手、あるいは物思いに耽っていたこと。 そんなあれこれを、大崎さんがらしく描いた10編の短編とおまけの1編。 著者で選んで失敗ではないけれど、もう少し長めのものの方が読みでがあったか。 それと結構な歳の差夫婦で幼子あり、てのが数編。体験からくるものだろうか。目につく程には、このパターン不要であろう。2014/06/21
mataasita
6
田舎から東京に出てきた主人公。大学になじめずにフリーターをしている。不思議な少女に出会い、お互いを補完するように傷をなめあう。そして突然の別れ。時を経て、あの経験はよかったなと振り返る。大崎善生おきまりのワンパターン。ある意味徹底されていてすごい。そしてこういう短編集はなぜか好き。同じように地方から東京の大学に来て、不思議な美少女に出会えなかった後悔なのか、うらみなのか、うらやましい気持ちなのか。。。それにしても表題作はひどすぎる。よくこんな陳腐な小説が書けるなぁ。それでも買ってしまうんだけど。2021/10/16