内容説明
「ごん、おまいだったのか。いつもくりをくれたのは。」ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました。だれもが読んだことのある名作「ごんぎつね」をはじめ、まっすぐな心をとねがう親心がかなしい「うた時計」など人間の心のかなしさを描いた五編を収録。
著者等紹介
新美南吉[ニイミナンキチ]
1913年、愛知県に生まれる。本名・新美正八。半田中学のころより文学に興味をもち、文芸誌「オリオン」をだす。童話雑誌「赤い鳥」(1932年1月号)に「ごんぎつね」が掲載され、この年、東京外国語学校英文科に入学。1936年、卒業して貿易会社に勤めたが、喀血のため帰郷。代用教員を経て安城高等女学校教諭となる。1942年、腎臓悪化の中で数々の代表作を一気に完成。1943年、死去
武田美穂[タケダミホ]
1959年、東京に生まれる。日本大学芸術学部中退。生命力あふれる表情豊かな絵で子どもの世界をいきいきと表現している。自作の絵本に『となりのせきのますだくん』(講談社出版文化賞絵本賞、絵本にっぽん賞)に始まる「ますだくん」シリーズ、『ふしぎのおうちはドキドキなのだ』(絵本にっぽん賞)、『すみっこのおばけ』(日本絵本賞読者賞、けんぶち絵本の里大賞)があり、その他の絵本に『おかあさん、げんきですか。』(日本絵本賞大賞、同読者賞/以上ポプラ社)など多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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めしいらず
44
「ごんぎつね」ひとりぼっちの寂しさをよく知るごん。それを紛らわすための無邪気なイタズラ。孤独な境遇の者への共鳴。誤解が招く痛ましい最期。本当の優しさっていうのは、相手に伝わらないことの方が多い。きっと。「うた時計」どんなに親不孝の子でも父はいつだって心配だし、後ろめたさを抱えた息子にも親を大切に思う気持ちはちゃんとある。息子がオルゴールを盗んだのは、本当はどんなに遠くにいても親や故郷を懐かしむ為だったように思えた。ラスト、父の手の中で鳴り響くオルゴール。優しく切なくて、どこか懐かしい調べが聴こえる。2013/12/13
Gummo
14
シリーズ第3巻。「ごんぎつね」など5編を収録。「『ごん、おまいだったのか。いつもくりをくれたのは。』ごんは、ぐったりと目をつぶったまま、うなずきました」。あまりに悲しいラストが涙を誘う、言わずと知れた名作「ごんぎつね」。独りぼっちのごんはきっと寂しかったのだろう。悪戯をすることで兵十と関わりを持とうとしたのかもしれない。しかしある悪戯が兵十に悲しみをもたらしたために、ごんは悪戯をやめ、罪を償うかのように栗や松茸を兵十に届け始める。結局、その想いは悲劇的な形でしか届かなかったのだが…。何度読んでも切ない。2013/08/01
なま
10
★3.9 ごんぎつね/うた時計/のら犬/百姓の足、坊さんの足/久助くんの話/の5編。南吉の描く人や動物達は失敗や過ちを犯しても、そこをいじらしいほど素直に悔い改め、自分と葛藤しながら生きる姿に惹かれる。百姓の足〜に関しては、同じ罪を犯した百姓と坊さんなのに、自分だけが痛い思いをする百姓の坊さんに対する妬む心情と反省する気持ちの揺らぎが描かれる。生きていく中で妬みや怒りの負の感情を抑え過ぎると自分自身の気持ちさえわからなくなってしまう。そんな時に心の解放をしてくれるような数々の物語。2024/04/19
おはなし会 芽ぶっく
7
『一枚のはがき』(5巻収録)を読んでみたくて借りに行ったら、全巻かりてしまいました。表紙絵は武田美穂さん。『 ごんぎつね / うた時計 / のら犬 / 百姓の足、坊さんの足 / 久助くんの話 』 2020/08/04
まげりん
5
「図書館の主」に出てた「うた時計」を読みたくて借りてきた。男の子の素直さと親子の哀しさと愛しさ。いろんな気持ちがすっと胸にしみこんでいく感じ。自分の中に芽生えたそんな感情が愛しくて包み込みたいような気持ちになる。2016/07/22