出版社内容情報
東京の会社を辞めた里男は、従兄が経営する旅館「海鳴屋」で働くことにした。訳ありの従業員たちによる「楽団」に巻き込まれて――。
内容説明
気取らない定食と温泉だけが自慢の旅館・海鳴屋。元バンドマンの主人と女将、カリブ出身の黒人青年、仲居の老姉妹、自称・幽霊作家ら個性豊かなメンバーが、ひとつ屋根の下でくり広げる音楽と希望の物語。渾身の長篇音楽小説。
著者等紹介
野中ともそ[ノナカトモソ]
東京都生まれ。音楽ライター、ファッション誌編集者等を経て、1998年、『パンの鳴る海、緋の舞う空』で小説すばる新人賞を受賞。ニューヨークに在住。小説作品に加え、児童文学、自身のイラストによる絵ものがたりやイラストエッセイ集など、多分野にわたる創作活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
108
音楽を通じた人と人との関係に心打たれます。故郷に戻り、海鳴屋という旅館に就職することになった里男は半ば強制的に従業員によるスティール・パンの演奏に参加させられますが、徐々に打ち解けていく様子を見ていると、里男は音楽を通じて仲間になっていくのを感じました。ドラマチックな展開は特にありませんが、何かをきっかけにつながる人たちの不器用さ、孤独、切なさ、あたたかさが伝わってくるのが愛おしい。詰め込みすぎなところは否めなせんが、響くものがありました。2017/01/14
散文の詞
77
スティール・パンという楽器を中心としたホームドラマって感じです。 各章ごとに主人公とは違う視線で少しだけ書かれていて、それがいい感じにキャラを立たせています。 多分読みやすさもあって、さほどの事件もなく淡々と進んでいくのは、小気味さを与えいい感じです。 ただ、何かが違うんです。日本の北の方の土地の出来事なんでしょうが、どうも日本の出来事ではないような、 なんか、書物ででも調べた日本や日本人はこうだからという感じで、リアリティがないと言うか。 まあ、でも、それなりに面白かったです。 2020/02/25
ともとも
29
国籍、それぞれが歩んできた人生が違うものたちが まるで運命に導かれたかのように出会い、集いカリブの楽器を使った 楽団を結成していく。 広くもアリ、狭くもある微妙な空間、距離間の中で、それぞれリンクしている 感じをしつつも、悲喜交々に人生に音楽に一生懸命に生きている。 そんな音楽、青春、人生の物語を楽しく、切なく紡いでいく。 出会い、人生、そして音楽の素晴らしさを痛感しながらも、 救いや癒し、そして希望を感じさせる1冊で良かったです。 2016/01/24
み
21
ジャケ読みした作品。ちと微妙(^^;温かい空気はイイのですが、あれこれ尻切れ感が…。まっ、スチールパンを取り上げてることでチャラだわ(^^)前の会社の方が、スチールパンをある日会社に持って来て、昼休みの駐車場で演奏披露したことを懐かしく思い出しました♪2019/01/13
傘介
20
野中さんのデビュー作『パンの鳴る海、緋の舞う空』を読んだ時からパンに対する強い思い入れは感じていたが、あちらは熱情的な恋愛小説だった。それが今作はこうきたかー的な、地方都市を舞台にした人々のつながりの物語だ。素人中心の楽団が大成功を果たすとか、そんなドラマティックな展開は起きない。大きな事件もない。だからこそ小さな町で音楽を通して繋がる人々の不器用さや温かさ、孤独や切なさが、ひたひたと伝わってくる。ラストの再会場面、あえて書き込まなかったんだろうけど、そこがまたぐっと泣けて。続編所望。2014/06/22
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