内容説明
瀬戸内海に浮かぶ因島。千波は、船造所で働く父親、明るく世話好きな母親、血のつながらない弟・大地と暮らす中学三年生。親友の恵と一緒に、同じ島出身の人気ロックバンド・ポルノグラフィティにあこがれている。島を出るか、残るか―高校受験を前に心悩ませていた頃、ある事件が起こり…。夢と現実の間で揺れ動きながら、おとなへの一歩を踏み出す少女を瑞々しく描いた感動作。
著者等紹介
八束澄子[ヤツカスミコ]
広島県生まれ。『青春航路ふぇにっくす丸』(文溪堂)で日本児童文学者協会賞、『わたしの、好きな人』(講談社)で野間児童文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
汐
28
瀬戸内海に浮かぶ因島に暮らす中3の女の子、千波のお話。再読し、高校受験や将来への不安。友達を素直に応援できない気持ちや、頭ごなしに否定されるのが怖くて親に志望校や夢を打ち明けられない気持ちなどにとても共感しました。島のただ一つの高校に通うか、本土の高校に通うか。私はそこまでの決断ではなかったものの、私立か公立か、親にかける経済的負担はいつも頭にありました。まだこどもだから親という波に流されてしまえば呆気ないけど、でも自分で一歩を踏み出す勇気が凄いと思いました。どんな時も大好きな音楽が力をくれます。2015/07/05
びすけっと
13
2011年11月刊。単行本2009年刊。因島の中学生のお話。と読み始めてすぐ、感想文課題図書となった年に読んだなあと。主人公・千波の母のおおらかさがとてもすてきです。養子として迎えられた男の子、弟を昇華しきれずにいた千波に転機が。千波の友人、恵の生活感と前向きな姿に読み手の私も励まされます。著者も、解説を書いた湊かなえさんも、ポルノグラフィティも因島出身とは!橋が架かっても、本土を意識せざるを得ない土地があること、心にとどめておきたいです。郷里を愛するすてきな一冊です。 2014/08/25
あい
9
ポルノグラフィティの熱烈なファンの因島の中学生のお話。故郷に近いので方言も懐かしく、手に取るように風景が空気が、そして瀬戸内の島の子供たちの心情が伝わってきました。ポルノの因島凱旋コンサートは私もテレビで見た気がします。解説は作者さんと同じく因島ご出身の湊かなえさん。中学校の課題図書だったそうです。サウダージを聞きながら涙を流した日もあったなぁ…と。2020/05/27
志村琴音
3
昔、King Gnuの井口理さんがラジオでポルノの曲を熱唱する企画をやっていた。間奏の所で「因島ー!」と叫ぶ井口さんの姿を何故か読みながら思い出してしまった。 井口さんを始め、作者の八束さんや解説の湊さんも、ポルノグラフィティに影響を受けて、各々が各々の形で活躍をしている。 嘗て自分を支えてくれた物に恩を返すように、大量の熱が込められた作品だったからこそ、同じような人のことを思い出せたのかもしれない。 本当に良い青春小説だった。2024/05/05
ゆき
3
因島に住み同郷のポルノグラフィティに憧れる二人の女子中学生、千波と恵。進路や家族のことで悩むという共通点があり中学生にとっては誰もが通る道だが、島暮らしならではの事情があったりと複雑である。ただ彼女たちの持ち前の前向きさと友情でそれらを乗り越える姿に胸が熱くなった。そして、ところどころ描写される島の情景がとても美しいのだろうなあと想像できるのが素晴らしい。ポルノの開放的であり切なくもなるような曲の数々とよく似合う景色なのだろうと思いを馳せられた。2020/04/26