内容説明
“心の風邪”で休職中の男と、家族を失った傷を抱える女。海辺の町で偶然出会った同い年のふたりは、39歳の夏を共に過ごすことに。人生の休息の季節と再生へのみちのりを鮮やかに描いた、著者デビュー作。『四十九日のレシピ』にも通じるあたたかな読後感に心が抱まれる物語。
著者等紹介
伊吹有喜[イブキユキ]
1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。2008年『風待ちのひと』(『夏の終わりのトラヴィアータ』改題)で第三回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞してデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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柊文庫本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
305
『四十九日』に続いて2作目の読了。なんとなく、作風がこんな感じかな、と予想していた通りの作品。哲司の元妻がめちゃ悪妻に描かれてたのが残念だった。結局、後から現れたオンナにはかなわないんだよね。哲司と喜美子の10年後を読んでみたい...なぁ。2016/03/28
さてさて
296
デビュー作となるこの作品では、伊吹さんの代名詞ともなる人の再生を描く物語が『紀伊半島の南東部、熊野灘に面した』『海沿いの町』美鷲を舞台に描かれていました。『補給部隊にはマチルダさん…』というまさかの”ガンダムネタ”が登場したり、あの伊吹さんがこんなこと書くの!と驚く”下ネタ”描写の登場に驚かされるこの作品。〈プロローグ〉と〈エピローグ〉の絶妙な使い方など今に続く伊吹さんの構成の妙を堪能できるこの作品。初々しさも感じさせるデビュー作の物語の中に、今に続く伊吹さんの優しい眼差しを感じることのできた作品でした。2023/03/29
おしゃべりメガネ
274
自分にとってはとても印象深い作品で、自分も本作を読んだ頃、転勤やら担当業務が変わるやらで、バタバタしており、本当に体力的にはもちろん、精神的にもかなりヤラレていて、相当まいっている時にこの作品を読みました。そんな状況下でしたから本当にココロに響き、感動というよりは、むしろじっくり考えされられた内容でした。人間どうしても自分が‘負’の状況になると、自暴自棄気味になり、知らず知らずのうちに周囲にまで悪影響(迷惑)を及ぼしてしまいます。どんな時にでも、無理はせず、あせらず、ゆっくりでと本作が教えてくれました。2011/05/08
SJW
259
伊吹さんのデビュー作品で、久々に伊吹さんの世界に浸った。心身ともに疲れはてた銀行員の哲司と家族を失って傷を抱えた喜美子は39歳の夏をともに過ごすことになる。全く異なる人生を歩んできた二人がお互いに引かれ合う感情を描いた大人の恋愛小説であり再生のドラマ。クラシック音楽を嗜む哲司から上品な話かと思ったが下ネタで笑いをとる展開もあり意外だった。「49日間のレシピ」と同じように、心を病んだ人達が再生されていく姿を追っていくのは心が癒される。音楽は全編に渡り「椿姫」の「乾杯の歌」が出てきて、(続く)2018/08/09
yoshida
254
哲司は仕事と家庭に悩み、心の風邪となり休職する。亡き母の残した紀州の家で哲司は夏の日を過ごす。偶然に出会った喜美子は思い悩む哲司を助ける。お互いに心に傷を持つ2人は心を寄合い、かけがいのない存在となる。現実が2人を引き離す。時間が状況を変える。本当にお互いを必要とする事に気付いた2人は人生をリスタートする。私が主人公の2人と同年代であり、また近い悩みもあり引き込まれました。人生は奇麗事だけではない。様々な事に責任がある。責任を受け止めて果たす。人生は絶望で終わる事はない。再生から歓びを得る事もできるはず。2016/11/24