百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 179p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121757
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

春は霞、夏は風吹き寄せて空を裂く夕立。四季刻々と移り変わる筑波の山へ語りかけるように、娘・お光は清らかな歌声を響かせる。老夫婦の愛と、しかし癒されることのない孤独の影が胸を打つ徳冨蘆花『漁師の娘』。盲目の元馬喰には、忘れられないある女性との思い出があった。「記憶の文化」を求め、全国各地を訪ね歩いた宮本常一の『土佐源氏』。土地の風に吹かれ、深まる秋に心躍る上州・利根川行。旅を愛し、酒を愛した歌人・若山牧水の紀行文『みなかみ紀行』。失われゆく日本がまざまざと蘇る三篇。

目次

漁師の娘(徳冨蘆花)
土佐源氏(常本常一)
みなかみ紀行(若山牧水)

著者等紹介

徳冨蘆花[トクトミロカ]
1868~1927。熊本県葦北郡水俣生まれ。本名・健次郎。同志社英学校中退後、兄・蘇峰の設立した民友社に勤務し、『不如帰』で作家の地位を確立。半農生活を送りながら創作活動を続けた

常本常一[ミヤモトツネイチ]
1907‐1981。山口県大島郡に生まれる。教員時代より地域習俗の聞き書きを開始、全国各地の常民生活と文化を克明に記録した。代表作に『日本の離島』(日本エッセイスト・クラブ賞)など。『宮本常一著作集』で今和次郎賞受賞

若山牧水[ワカヤマボクスイ]
1885‐1928。宮崎県東臼杵郡生まれ。本名・繁。早稲田大学を卒業後、尾上柴舟に師事。歌誌「創作」を主宰し、自然主義歌人として活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

136
他人と違ってもいいじゃない私は私、そう笑い飛ばせるほど、世界は広くなかった。かなしみは凝り固まって澱になりことばはうまく紡げない。それでも包んでくれる山の肌、一年一年、朝と夕ですら姿をかえるその近しさがlyricを与えるから、私のくちを借りて感動は出ていく。それは水面に反射する陽のひかりとか、薄桃にけぶる山の端だとか。風にまじるうたのなぐさめはもう聴こえなくて、でもそれは語られなくてはならない。風化して思い出も消えても。恋しさに山が鳴くから震えて身を落とすもみぢ葉。2020/11/11

臨床心理士 いるかくん

43
3人の作家の3篇の作品から成るアンソロジー。内容もさることながら、3者3様の文体の違いも味わいたい。2014/12/22

モモ

37
徳富蘆花『漁師の娘』常陸の国霞ヶ浦南の浮島に住む漁師の万作が拾った赤ん坊のお光。頭が良いのを嫉妬され学校をやめてしまう。寂しい気持ちを奮い立たせるように歌うお光の歌の美しさと霞ヶ浦の風景の美しさが際だつような話。宮本常一『土佐源氏』高知県山中で採話したもの。盲目の馬喰の女性遍歴。昔の夜這いがあった頃の話で、それなりの約束事があったらしい。実話なのがなんとも。若山牧水『みなかみ紀行』軽井沢から嬬恋・草津・花敷・沢渡・四万・沼田・法師温泉と旅する話。行ったことのある場所ばかりで興味深い。また再読してみたい。2022/12/04

TSUBASA

19
老夫婦に拾われ育てられたお光は口数は少ないが、山を愛し海を愛し歌を愛した。清らかな彼女が心中に秘めた孤独と愛情を描く徳富蘆花『漁師の娘』。父母を物心つく前に失い、馬喰に奉公に出され生きて来た老人の独り語り。盲目になっても記憶の中に蘇る女性たち、宮本常一『土佐源氏』。沼津を出て歌会仲間と出会いながら長野、群馬、栃木を巡った紀行文、若山牧水『みなかみ紀行』収録。前半2作が好き。『漁師の娘』は文の調子が良くて読んでて心地よかった。『土佐源氏』はこの時代に書かれた物としては女性関係で結構過激な話だったので驚いた。2016/05/29

17
徳冨蘆花「漁師の娘」宮本常一「土佐源氏」若山牧水「みなかみ紀行」の失われた日本の風景を描いた3編。若山牧水はお酒と山と川と旅が素晴らしい紀行文。土佐源氏の行きずりの交情。ほんの一瞬でも通いあった身体と情と一つ所に落ち着けない哀しみ。2022/06/11

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