百年文庫

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  • サイズ B40判/ページ数 161p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591121603
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

房雄の心は則子と綾子、二人の異性の間で揺れ動く。青春期の抑えきれない胸の高鳴りが聴こえてくる小川国夫の『心臓』。小学生の象一は、道草をして工場町の石垣に小さな「動物園」を作った。そこへ筑紫という少女が現れて…モダニズム作家・龍胆寺雄が描く子どもたちの旅課後(『蟹』)。「悪にはどんな小さな場所でも決して作ってやってはいけませんよ」。最愛の母を裏切ったことを悔いるうら若き女は、ある衝撃の事件を告白した(プルースト『乙女の告白』)。未熟ゆえに烈しく、秘められた心を描く三篇。

著者等紹介

小川国夫[オガワクニオ]
1927‐2008。静岡県生まれ。東大在学中にフランスへ留学し、帰国後『アポロンの島』を発表。後に島尾敏雄に評価され、注目を集める。地球海や郷里を舞台にした作品が多く、代表作に『逸民』(川端康成文学賞)などがある

龍胆寺雄[リュウタンジユウ]
千葉県生まれ。本名・橋詰雄。慶大医学部を経て、『放浪時代』を発表。流行作家となるが、文壇を批判する『M・子への遺書』を発表して波紋を呼んだ。サボテン研究家としても知られる

プルースト[プルースト][Proust,Marcel]
1871‐1922。パリ西部のオートゥイユ地区に生まれる。1896年に初の著書『楽しみと日々』を出版。初期には、没後に刊行された『ジャン・サントゥイユ』などを執筆する。生涯、全7篇におよぶ大作『失われた時を求めて』に取り組んだ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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モモ

48
小川国夫『心臓』綾子と付き合いつつ、則子にも惹かれる房雄。何をもって蕾なんだろう。龍胆寺雄『蟹』両親を亡くし叔父夫婦のもとで暮らす象一。居場所のなさからくる寂しさを、小さな「動物園」をこしらえて癒す。その動物園に気付いた筑紫との交流の日々。プルースト『乙女の告白』乙女とあるけれど…。母大好きな娘が罪を告白する。その内容が意外なほど下衆。引用『キリストのまねび』にあるように『官能の逸楽は、はじめは人をよろこばせるが、最後には傷つけ殺害するのである。』これも何をもって蕾なんだろう。未熟ということなんだろうか。2022/08/01

臨床心理士 いるかくん

38
3人の作家による3篇から成るアンソロジー。淡い思い、ほとばしる熱情。2014/12/05

kasim

35
百年文庫のコンセプトや造本は素晴らしくて、たくさん揃えたくなる。本巻は「青春」でもよさそうな主題が「蕾」と表されているのが洒落ている。百年も経っていないのに、日本の作品は古色蒼然として読みにくい。小川国夫にははっとするほど美しい文章があるが、二人の女性の間で揺れる若い男の濃厚な自意識は紋切型。龍肝寺雄の少年少女の淡い交流も暗い海の情景がいいけど堅い地の文に「~ちゃった」が何度か使われているなど日本語に違和感を覚える個所が多い。結局19世紀のプルーストの若書きの短篇がいちばん読みやすいという不思議。2022/12/31

神太郎

32
花が開く前の状態。それはつまり物事が始まる前兆のようなものか。或いは成長前の幼さか。内なる激しいエネルギーが感じられるものもあった。一篇一篇がじっくり読み込めるそんな作品群だった。「心臓」と「蟹」はどちらも男女だが年齢が違うとこうも感覚って変わるもんだなと。でも、なんかそこはかとない色気がどちらにもあってどぎまぎしながら。対するプルースト。大作「失われた時を求めて」で有名だが実は未読。しかし、読みやすいし、心理描写もうまいしで、あっという間に読めた。これは、大作に挑戦したくなってきた。良き三篇でした!2020/06/17

遠い日

20
タイトルがそのまま、人生の蕾の時期を指している。花開く前の、成熟する前の初々しいが危なっかしくもある心の動き。恋する季節の、定まらぬ自意識。あるいは、恋以前の自覚すらできない純情。そして、上り始めてしまった大人への階段。小川国夫の「心臓」は生々しく、激しく、龍胆寺雄「蟹」は、内面に疼きを抱えながらも、青く硬い蕾そのもの、プルーストの「乙女の告白」は、罪を感じながらの愉悦に溺れる少女の苦悩が痛々しい。遥か昔に通り過ぎ、忘れかけた季節を思い出させてくれた3編。2016/03/03

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