内容説明
江戸幕府が瓦解して五年。強面で人間嫌い、周囲からも恐れられている若商人・喜蔵の家の庭に、ある夜、不思議な力を持つ小生意気な少年・小春が落ちてきた。自らを「百鬼夜行からはぐれた鬼だ」と主張する小春といやいや同居する羽目になった喜蔵は、次々と起こる妖怪沙汰に悩まされることに―。あさのあつこ、後藤竜二両選考委員の高評価を得たジャイブ小説大賞受賞作、文庫オリジナルで登場。
著者等紹介
小松エメル[コマツエメル]
1984年東京都生まれ。母方にトルコ人の祖父を持ち、トルコ語で「強い、優しい、美しい」という意味を持つ名前を授かる。國學院大學文学部史学科卒業。専攻は日本近世史。2008年、初めて執筆した小説「一鬼夜行」にて、あさのあつこ、後藤竜二両選考委員の高評価を得て、ジャイブ小説大賞初の「大賞」を受賞。瑞々しいイマジネーションと、温かな人物描写の才を併せ持つ新鋭(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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海猫
259
買ってから長らく放置してたけど読んでみたらなかなか面白い。妖怪小説として楽しいし、主人公コンビのキャラは立ってるし、連作長編的な仕立てが読みやすい。でもって各話の趣向も凝ってる。文章をもうちょっとあっさり気味にして行間を読ませてもいいんじゃないか?とは思うもののデビュー作でこれなら上出来かと。これ一冊で綺麗にまとまって終わるのも好感。でもなにやら物足りないのは、喜蔵と小春の掛け合いをもっと読んでいたいってことかな。次でどう再起動するのかわからないが、なるべくしてシリーズ化された作品なんだなあ、と納得。2015/10/03
kishikan
110
前半、会話や文章に入り込めず、理解が進まなかった。しかし、3章位まで読み進めシチュエーションがつかめてくると、妖怪なのに少年の姿をした「小春」と人間なのに妖怪みたいな怖い風貌の若商人「喜蔵」との愉快なコンビのこの物語が非常に面白く、爽やかに感じてきた。明治初期の江戸の町という時代・場面設定と妖怪話の組み合わせは珍しい。また、小春をはじめとする言葉使いが、(わざとなのか)時代設定面でアレッと思わないでもないが、それでいて読者をグイグイと物語に惹きつける、小松エメルさんの創造力はすごい。期待の新人登場!2011/04/06
ひめありす@灯れ松明の火
107
今は懐かしき『活字倶楽部』にて刊行されたばかりのこの本が紹介されていて、気になって早数年。新年オフ会にて頂戴して参りました。「るろうに剣心」と同じ位の時代の東京を舞台にした鬼の小春と閻魔様よりおっかない顔の喜蔵の物語。河童の茶々子、あんまり怖くない件、と小春を始め妖怪達がみんな可愛く、深雪や綾子、さっちゃんなど女の子達も負けず劣らず可愛らしくて、ほっこりした気分になりました。けれど物語全体は小春の名前の通り、冬の気紛れな暖かい日にひゅうと吹きつける風はやっぱり冷たい様な、そんな温かくも少し寂しいお話でした2013/03/30
ちはや@灯れ松明の火
95
寒さが徐々に強まる晩秋の切れ間、季節がずれたような暖かい日を小春日和と呼ぶ。そんな名を持つ鬼の少年との出会いは、鬼以上に凶悪な面相の青年の人との縁薄い日々が途切れた瞬間であり、これから始まる妖怪騒ぎだらけの賑やかな生活の幕開け。人間じみた妖怪と妖怪も恐れる人間が罵り合い貶し合いつつも同じ牛鍋を箸でつつき頬張る、それはひとつ屋根の下暮らす家族同然の繋がり方。江戸から明治へ、旧い時代と新しい時代が混ざり合い、やがて魑魅魍魎犇めく夜は瓦斯灯の光に白く塗り潰されていく。だからこそ、今だけの小春日和を共に喜ぼうか。2010/10/19
Penguin
79
時代物と思って読んだが、時代が明治に入っているからか、一般的な時代小説よりかなり読みやすい。 キャラが豊かで、話しが進む中での変化も楽しい。読み進めるにつれて、どんどん愛着が湧いてくるのも魅力の一つ。 伏線も綺麗に回収されてすっきりと心地好い。2012/02/03