百年文庫  44

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  • サイズ B6判/ページ数 157p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119266
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

ドアが聞いて現れたのは「わたくし」にそっくりな娘だった…。亡き双子の姉と不可思議な交流を描いた吉屋信子の『もう一人の私』。裕福な家庭に育った彼は父の口利きで一流会社に就職が決まりかけたが…。青年の潔癖さと世間との埋まらない距離(山本有三『チョコレート』)。「詩人」はぶらりとやってきては「私」の煙草を吸い、借金を申し込み、酒を飲んで帰っていく。生活は破綻しつつも純粋な心を持ちつづけた男の生涯(石川達三『自由詩人』)。心を照らす他者の存在、我と汝の物語。

著者等紹介

吉屋信子[ヨシヤノブコ]
1896‐1973。新潟県生まれ。10代のころから雑誌に投稿するようになり、1916年から「少女画報」に連載した『花物語』が好評を博し、ロングセラーとなった。52年に『鬼火』で女流文学者賞を受賞

山本有三[ヤマモトユウゾウ]
1887‐1974。栃木県生まれ。本名は勇造。東大在学中に第三次「新思潮」の創刊に参加。社会劇で新進劇作家として名を上げる。文芸家協会の設立にも尽力し、『真実一路』『路傍の石』など、人道主義に根差した小説で多くの読者を獲得した

石川達三[イシカワタツゾウ]
1905‐1985。秋田県生まれ。早稲田大学を1年で中退した後、1930年、移民船でブラジルに渡り農場で半年を過ごして帰国。その体験をもとにした『蒼氓』で第1回芥川賞を受賞。戦後は主に社会派の新聞小説を多数手がけた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

97
「我」と「汝」をテーマにした3つの短編を収録。石川達三の「自由詩人」が面白かった。人の心に食い入る詩を書きながら、生活は破綻している山名の哀しい一生。若いうちは天衣無縫の詩人としてそれなりに魅力を感じる山名が生活に追われて、落ちぶれていく姿は痛々しく感じた。作者は戦中や戦後の庶民の生活をさりげなく物語の背景に描いており、そんなところに社会派作家としての視点の確かさを感じた。山名の最期は無残なもので、読み手の心に突き刺さる。作中の架空の詩は見事なもので、作者が詩的な感性を持っていたことを実感できた。2014/11/09

モモ

52
吉屋信子『もう一人の私』生まれてすぐに死んでしまった双子の姉。私にそっくりな双子の姉が私の前に現れる。そして私になりすまして…。ちょっと怖い話。山本有三『チョコレート』大学を卒業したが職がない恭一。会社の重役だった父が職を準備だててくれたものの…。正義と義理をとおすが何とも言えない結末。石川達三『自由詩人』詩人の山名英之介は才能はあるが生活力がない。その山名に翻弄される夫婦。時折ある山名の詩が確かに良い。返す気もない借金を重ね、妻子を軽く扱い、破滅に向かう山名。他者と自分自身との関係を考えさせられる一冊。2022/08/28

アルピニア

46
汝に向き合う自分が浮かび上がる3篇。「もう一人の私/吉屋信子」自分には生まれてすぐに亡くなった双子の姉がいたことを知った私は、自分にそっくりな人に出会う。不可思議な体験。「チョコレート/山本有三」恭一は、親の敷いたレールを、友のために蹴ったのだが・・題名が虚無感を示していて印象的。「自由詩人/石川達三」「私」の友である詩人の「山名」は、人生を自由に楽し気に生きている。そんな彼に私はどうしても勝てない。三度目の結婚で子供が生まれ彼の上に変化が起こる。しかし、その先には・・。自由について考えさせられる一篇。2024/02/15

神太郎

32
テーマに対しての作品のチョイスがミスマッチな感じも否めない百年文庫あるあるを感じながら。吉屋信子の作品はややホラー調。しかし、一番テーマに沿った内容かもしれぬ。山本有三の作品は就活生とかが読んだらどう思うだろうか。タイトルは「チョコレート」だが、甘いだけでなく少しほろ苦い。石川達三の「自由詩人」はまぁ、どうしようもない男とそいつをなかなか見捨てることができない私との関係性を描く。男の最期はそうなって当然とも思えるがどこか悲哀がある。テーマにそってないものもあるが、作品一つ一つのクオリティは抜群であった。2017/12/13

19
石川達三「自由詩人」は昨今の児童虐待のニュースを思いだし、胃が痛くなる。サイダーに毒を盛り、死んでいく子どもから助けを求められた父親が「この子にとって私は神でした。神であることに私は耐えられない」と慟哭し自殺する。ケツから手つっこんで奥歯がたがた言わすぞクソが。一人で死ぬ分(ひとりじゃないけど)だざおのがマシだな…。いや創作物だということは分かってる分かってるんだが。他、吉屋信子「もう一人の私」夢幻秋露童女と戒名のみ知ってる双子の姉に、結婚式当日に旦那をNTRかけるSF、山本有三「チョコレート」の三篇。2021/03/28

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