百年文庫  41

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  • サイズ B6判/ページ数 139p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119235
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

男が会社をクビになってから、ふたりの生活は落ちるところまで落ちた。二言目には「死ぬ」という惰弱な男に女は愛想を尽かすのだが…切れそうで切れない男女の絆(芝木好子『洲崎パラダイス』)。大学を出たばかりの「ぼく」が浅草の大姐御とすごした一夜の思い出(西條八十『黒縮緬の女』)。二十年連れそった夫が浮気し、妻はさっさと離婚届を出すが、なぜか夫を奪った女や子どもの面倒までみてしまう…(平林たい子『行く雲』)。男女を超えた情けの深さ、遙かなる女ごころ。

著者等紹介

芝木好子[シバキヨシコ]
1914‐1991。東京・浅草生まれ。1938年、「文芸首都」の同人となり、42年に『青果の市』で芥川賞を受賞。『洲崎パラダイス』など洲崎ものの連作や、伝統芸術に題材を取った作品で高く評価された

西條八十[サイジョウヤソ]
1892‐1970。東京・牛込生まれ。1910年から象徴詩や童謡で活躍。24年に渡仏してソルボンヌ大学で学び、帰国後は早稲田大学で教鞭をとった。歌謡曲の作詞家としても多くのヒット曲がある

平林たい子[ヒラバヤシタイコ]
1905‐1972。長野県生まれ。本名はタイ。諏訪高等女学校時代から作家を目指し、1927年の『施療室にて』によってプロレタリア作家としての地位を確立。46年の『こういう女』で第1回女流文学者賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

モモ

49
芝木好子『洲崎パラダイス』色町にいた蔦枝と職を失いしょげこむ義治。もっと違う未来を夢見て義治と縁を切ろうとするも…。色町に入ると、二度とまともになれない毒気にやられるという言葉がなんだか沁みる。西條八十『黒縮緬の女』一夜を共にした謎の黒縮緬を着る女。素性が分かると、怖がる男。平林たい子『行く雲』夫が浮気して子までいると知った里子はさっさと離婚する。だが心は揺れ動く。男と女のままならない人生がつまった一冊。2022/08/03

ぐうぐう

30
芝木好子のうまさに舌を巻く。「洲崎パラダイス」は短編でありながら、まるで長編のように急ぐことなく、人物をじっくりと(それでいて端的に)描写する。枚数が短くなれば、どうしても説明調になりがちだが、「洲崎パラダイス」にはそれがないのだ。意気地のない男を見限るつもりが、相手に先に去られてしまうと急に心細くなる女の矛盾した心情が、素直に伝わってくる。(つづく)2021/02/25

I (et al.)

29
作家三人の「女性」を描く短編たち。性急な燃え上がる思いではなく、時間とともにじんわりと胸に迫る思慕と描写であった。芝木好子『洲崎パラダイス』では、洲崎という街の一角に生きる人々がじっくりと描かれる。惰弱な男と分かれられない女、それを見つめる女将、それぞれの心の機微が交差して浮かび上がるさまが見事に思われた。2022/02/27

ワッピー

27
①芝木好子「洲崎パラダイス」 ②西條八十「黒縮緬の女」 ③平林たい子「行く雲」を収録。①「濹東綺譚」から飛んで、映画経由で原作に到着。若い男女の刹那的な生き方をシビアに描写。映画では、もっとキャラが書き込まれ、男の奉公先の蕎麦屋のお嬢さんが追加されたり、飲み屋の女将の旦那が帰ってきたりと大サービスだったが、原作は最小限の描写できれいに切り上げている。②は、浅草六区の大姉御との一夜の邂逅を回想した名作。③は、旦那の事故死を機に元妻と、後妻との女の意地のやりとり。どれも荷風の世界よりだいぶウェットな人情劇。2019/07/03

神太郎

25
女の人の強さと情の深さを感じる。「洲崎パラダイス」は、切れそうで切れないカップルを描く。つい世話をしたくさせる男の態度か情が深い女性が凄いのか……。西條八十の作品の女性は読んでいても、文章中から良い女っぷりなんだろうとわかる……が、思わぬ最後のネタバレには驚かされる。平林たい子の「行く雲」は正に情の深い女性の話だった。ここまでの事をできるのはすごすぎじゃなかろうか?ある意味「ドライ」なんだろうか?男でもここまではできないと思います。まとめとしては女性の愛情の深さには感嘆の念しかありません。いや本当に。2017/09/30

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