百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 173p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119150
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

夜の静寂が村をつつむ頃、月の光が男たちの影を浮かび上がらせる―。貧しい土地に根を張る農家の暮らしぶりを素朴な小宇宙として写しとった『フィリップ一家の家風』(ルナアル)。公園のベンチで日を過ごす老人の一瞬を鮮やかに描いたリルケの『老人』。出征中に妻は不貞を犯したのではないか―疑念に囚われた夫の苦悩と家族が担った運命を描き、深い感動を呼ぶプラトーノフの『帰還』。庶民の人生に光射す瞬間、神々しいまでの生命の流露をとらえた三篇。

著者等紹介

ルナアル[ルナアル][Renard,Jules]
1864‐1910。フランスの小説家、劇作家。父が村長をしていたフランス中部の村で育つ。パリで高校卒業後、文学の道に入り、1892年の『根なしかずら』で作家として認められる。代表作に『にんじん』『博物誌』など

リルケ[リルケ][Rilke,Rainer Maria]
1875‐1926。20世紀を代表するドイツ語詩人。プラハに生まれ、ドイツ、パリ、スイスなどヨーロッパ各地を転々とし、詩作を続けた。代表作に『マルテの手記』『ドゥイノの悲歌』など

プラトーノフ[プラトーノフ][Platonov,Andrey]
1899‐1951。ロシアの作家。技師として働きながら、詩や評論を執筆。創作活動のピークにあった1930年当時は反社会主義的と批判されて発表の場を失ったが、後に20世紀ロシア文学の最高峰と評価される。代表作の『チェヴェングール』『土台穴』などは80年代になってようやく発表された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

新地学@児童書病発動中

124
「月」というタイトルなので、月が出てくる物語ばかりなのかと思ったら、ルナアルの短編にしか月は出てこなかった。たぶん月光で照らし出されたような物語という意味なのだろう。「フィリップ一家の家風」は主人公とおかみさんのコンビがやり取りが面白くて、日本の漫才のように感じることがあった。飄々とした描写の中に農民の生活の哀感がさりげなく織り込まれている。リルケの『老人』はこの詩人の人物描写が光る作品。詩だけではなく、散文も巧いことが分かる。プラトーノーフの「帰還」は暗く重たい雰囲気が最後で鮮やかに変わる所が良かった。2016/01/05

アン

103
夏の夜の静寂に、約束したかのように姿を見せる素朴な村人達を月の白い光が照らす。積み重ねた年月と今ある生活を淡々と受け入れ、貧しくも気負うことなく暮らす姿が力強い『フィリップ一家の家風』ルナアル。人生の黄昏時を包む仄かな光があたたかい『老人』リルケ。戦地に行った夫が恋しく永い歳月が恐ろしかった妻、疑念と葛藤を抱えた夫、家族を支えようとした息子と健気な娘。戦争に翻弄された人々を鋭くも温もりある眼差しで捉え、家族の絆の尊さを紡いだ『帰還』プラトーノフ。流れゆく時を見守るかのような清らかな月の光に想いを馳せて。 2023/06/20

風眠

63
ギラッギラに輝く太陽の光でもない。雲間からさす一筋の光でもない。夕暮れの色鮮やかな光でもない。少し心細いような、少し寂しいような、仄かな月の光。決して明るくはないけれど、確かにある明るさ。人生のある瞬間にさす月のような光。それは、人々の胸の奥底にたたまれた喜びと哀しみ。貧しい農家の暮らしを写しとった思い出帳のような(『フィリップ一家の家風』/ルナアル)。通り過ぎる一瞬を切り取った『老人』/リルケ。夫の疑念と家族の真実が交錯する『帰還』/プラトーノフ。ふわりと頼りない月光のあとには、夜明けの光がやってくる。2018/11/09

帽子を編みます

61
【月を愛でる読書会2021】イベント向けとしては首をかしげる内容でした。リルケは月の描写があった?と探したところ、二行目 〜週、月、年〜 えー、そこ!素朴なお話が3編、ルナアル「フィリップ一家の家風」、リルケ「老人」、プラトーノフ「帰還」。自分では手に取らない内容でした。ルナアルのスケッチみたいな書き方が好きです。リルケも淡々と終わるのかと思わせて、ふわっと暖かい感じに終わるのは印象に残ります。プラトーノフは陰気くさい、自分の不貞未遂、妻への疑惑、自分なしで回る家庭、辛いのはわかりますが大人らしくない。2021/09/12

モモ

60
ルナアル『フィリップ一家の家風』手作りの羽根布団。近所総出の豚の屠殺。昔のフランスの生活が眼前に見えてくるようだった。リルケ『老人』森鴎外訳。三人の老人の穏やかな散歩とその余韻。プラトーノフ『帰還』戦争が終わり家に帰ってみると、どこか馴染めない妻と子。幼い娘は別の男性を慕っている。身勝手な妻の言い分に辟易し夫は家を出るが…。これでどうなれば感動を呼ぶのか疑問だったが、最後の場面で泣いた。これは映画化してもらいたい。プラトーノフの作品を発掘、翻訳した原卓也さんに感謝。プラトーノフの作品をもっと読んでみたい。2020/08/21

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