百年文庫  10

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  • サイズ B6判/ページ数 152p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591118924
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

老いて静かな日々を慈しむ「たか子」は、かつて身を投げるような恋をした。若き日に思いかよわせた二人が深い尊敬の念を抱いて再会する『白梅の女』(円地文子)。山間の城下町に生涯を閉じようとしているウメは思い立って旅に出る。長年心に封じていた願いが堰を切る鮮やかな一瞬(島村利正『仙酔島』)。古墳から出土した伝説の硝子器を訪ねる旅に亡き妹への愛惜を織り込んだ井上靖の『玉碗記』。可憐な花、青い波、晩秋の雨―季節の移ろいと歳月の気品が香る三篇。

著者等紹介

円地文子[エンチフミコ]
1905‐1986。東京・浅草生まれ。国語学者、上田萬年の次女。家族の影響で、幼い頃から歌舞伎や浄瑠璃に親しむ。『女坂』で野間文芸賞、『朱を奪うもの』『傷ある翼』『虹と修羅』の三部作で谷崎潤一郎賞、『遊魂』で日本文学大賞を受賞

島村利正[シマムラトシマサ]
1912‐1981。長野県生まれ。家業から逃れるために14歳で家出して奈良へ。志賀直哉、武者小路実篤、瀧井孝作の知遇を得る。1940年『高麗人』で芥川賞候補となる

井上靖[イノウエヤスシ]
1907‐1991。北海道旭川市生まれ。京都大学卒業後、毎日新聞社に入社。戦後になって、多くの小説を発表し、1950年『闘牛』で芥川賞を受賞。『天平の甍』『風涛』『孔子』などの歴史小説で高い評価を得、文化勲章受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

124
改めて百年文庫の素晴らしさを実感した一冊。短編ながらどの作品も長い時間の経過を描いており、三冊の長編を読んだ満足感を得ることができる。島村利正の『仙酔島』は人間同士の不思議なつながりを格調高い文体で描き出しており、昔の日本の文学が持っていた香気を伝えてくれる一篇。井上靖の『玉碗記』はこの作家らしい人間の孤独を表現した短編で、薄幸の夫婦の生が胸に迫る。円地文子の『白梅の女』が一番の好みで、師と教え子の恋という禁断の喜びに身を焦がした二人が、年齢を重ねてから再会する場面のしみじみとした味わいが良かった。2015/11/08

ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中

119
思い返すと梅の香が鼻を擽る。凛として透き通った空気のような、それが寧ろ弛むような、可憐なおんな。心中したいと思いつめる相手もないし、夫と死に別れることも今は想像できないけれど。何時だって愛するひとに一途で誠実で、過去の男にも恥じず寄らず、背筋を伸ばすけれど寛いだ雰囲気も醸すような、たか子のような才女でいたいと憧れる。 円地文子さんのお名前は初めて聞いたけれど、もう少し長文の「白梅の女」で描かれなかったたか子の生涯とじっくり向き合いたかった。名残惜しい気持ちです。2020/11/23

藤月はな(灯れ松明の火)

79
「季」というよりも「色」、「食」、「光」のテーマも見える三篇。初円地文子作品ですが、滋味溢れる素晴らしい作品。生涯で命を燃やし尽くしても構わないと思うほどの恋をしたたか子。そんな彼女の過去を知りながらも受け留め、尊重できる女性として愛し続けた沢辺氏がいてくれたからこそ、彼女は凛然とした美しさを持ったのだろう。しかし、そんな彼女が唯一、取り乱したのが自分の子供と逢う事だった。過去の激情の亡霊とも言える息子との再会は、彼女に調和を齎してくれた沢辺との不義理になる不意打ちだと思ったのだろうか。一抹の哀れがある2018/08/11

えみ

61
気高い誇りと繊細な愛を、移ろう季節に投影した3篇の短編集を収録した『季』。百年文庫シリーズ第10弾。一度は命まで惜しくないと思った恋の相手との再会と、確かに重ねた年月の重さが身に染みる夫への愛を描いた、円地文子の「白梅の女」。旅先で思い出すのは決して表に出すことのなかった想い、細やかな感情描写が美しい、島村利正の「仙酔島」。亡き妹と、彼女の夫となった亡き友人の疑念の残る愛情を伝説の硝子器を見ることで解放させた、井上靖の「玉碗記」。季節の特徴を登場人物達の心と見事にシンクロさせた高潔麗しい想いが眩しい一冊。2022/11/06

アルピニア

53
私にとって、感情を読み取るのが難しい3篇だった。「白梅の女/円地 文子」若き日の道ならぬ恋の熱情を鎮めたのは子への罪悪感だったのではないかと思うのだが、最後の反応がよくわからなかった。「仙酔島/島村 利正」船頭夫婦を見て心によぎった思いとは、何だったのか。あれでいいのだ。に吐露された気持ちがもやもやとしてつかめなかった。「玉碗記/井上 靖」春日皇女の歌に込められた愛のない悲しみ。それを何度も朗読する男。愛に気づいたのか、それとも愛せなかったことに対する後悔なのか。2023/05/19

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