内容説明
やがて、黒いちょうは、その子のむねにとまり、ぴたりと、はねをとじました。かなしいしるしのように―(「黒いちょう」より)。松谷童話の原点となった初期作品集。
著者等紹介
松谷みよ子[マツタニミヨコ]
1926年、東京に生まれる。1956年より民話の採訪を始め、『龍の子太郎』(講談社)に結実する。作品は国際アンデルセン賞優良賞を受賞。そのほか、『ちいさいモモちゃん』(講談社)で野間児童文芸賞、『あの世からの火』(偕成社)で小学館児童出版文化賞など
宮本忠夫[ミヤモトタダオ]
1947年、東京都に生まれる。絵本作家。『おじさんの青いかさ』(すばる書房)ですばる書房新人賞、『えんとつにのぼったふうちゃん』(ポプラ社)で絵本にっぽん賞、『ゆきがくる?』(銀河社)でサンケイ児童出版文化賞、『ぬくい山のきつね』(新日本出版社)で赤い鳥さし絵賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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神城冥†
19
童話って優しいだけじゃないってのがわかる作品ばかり。戦争や貧困、淡く死の香りも漂う。「黒いちょう」は悲しくて泣けてきた。「雪」は綺麗な話なんだけど、深読みすると綿菓子屋のおじいさんは天に召されてしまったのかもしれないな…と思う。2015/05/16
ヒラP@ehon.gohon
17
松谷みよ子さんの初期作品集ということで手にとりましたが、太平洋戦争に対する思いを深く感じる作品があった他は、心に響くメルヘンの世界でした。 魔法でじょうろに変えられてしまったお姫様という発想は、西洋の物語が日本的にアレンジされてるように思いました。 「黒いちょう」は、絵本でも読みましたが、親思いの少年の悲劇が現実感をもって浮かび上がりました。 2024/01/16
T.N
3
明るい印象の一、二巻とは毛色が異なって、『なまこの時計屋』『黒いちょう』『赤ちゃんのおへや』と、「戦争」「貧困」が絡んできた(あとがきを読むと、一見二つの要素を持たないほかの作品も実は戦時中の自己が投影されていることがわかる)。松谷童話の原点となった初期作品集。と聞けば『とかげのぼうや』『スカイの金メダル』は確かにいまひとつ印象に残らなかったぶん、まだ若かったからかなあ、なんて言ってみたりして。『じょうろになったお姫さま』と綿菓子の『雪』が好き。全七編。2014/04/24