内容説明
天才少女ともてはやされながら、怪我が原因のスランプで、フィギュアスケート界を去らざるをえなかった可南子。しかし、敏腕コーチに見出され、高校入学を前にペアスケーターとして復帰する。パートナーとなる2歳年上のナガルは、才気あふれるスケーターだが、強引で傲慢なタイプ。可南子は徐々に惹かれつつも、素直になれず…。著者の原点となる「幻の処女作」が、ついに文庫化。
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
岡山県生まれ。同志社大学法学部卒業。1993年に「おとぎ話」(『玉手箱』所収)で海燕新人文学賞受賞。2005年に鳥清恋愛文学賞を受賞した『欲しいのは、あなただけ』(新潮文庫)や、2006年に発表した『エンキョリレンアイ』(世界文化社)などで人気を博す。現在、ニューヨーク州ウッドストック在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優愛
66
妖精は、彼女は。感情も何もない無機質なガラスの森を抜け出して彼と結ばれたかった。その先に待っているのが別れだったとしてもその手を取り合い、同じ世界で生きていきたかった。でも寂しくはない。日常に消え、溶けていく愛すべき細部に彼と彼女の姿があるから。言葉を持たない、復唱することしかできない愛しい妖精はやっと見つけた。自分の想いと言葉を。この森を抜け出せば戻れなくなる。それでもいい。彼女の物語の中ではシンデレラは未練なんて残さない。両方の靴を脱ぎ捨てて羽ばたいていく。その意味が恋の終焉だと私にはわかったから。2015/02/01
わった
15
全体通してとても綺麗!!スケートに恋に文学と、綺麗なものがぎゅっと詰め込まれた小説。また小手鞠さんだから仕上げられた物語なんだなと思います。綺麗としか言いようがない。語彙力が乏しくてうまく伝えられなくて辛い…!2016/11/08
波多野七月
15
初恋が「幸せ」だなんて、いったい誰が言ったんだろう。「好き」という思いは、いつだって苦い。自分を傷つけたスケートの世界に、再び戻ってきた少女・カナ。ペアの相手として出会った、強引な少年・流。思わず「彼氏がいる」と嘘をついてしまったカナと、カナへの思いを真っ直ぐにぶつけてくる流。次第に流に惹かれていくカナの、どうしようもない気持ちがただ切ない。初恋の苦さ、そして胸のつまるような思い。ラストの展開は、カナという少女の旅立ちのために必要だったのかもしれない。恋愛小説の妙手・小手鞠るいの幻の処女作。2015/05/24
一五
8
少女フィギュアスケーター ペアを組むことになったスケーターへの想い、初恋? 甘々でしたぁ2023/12/07
びすけっと
8
2010年1月刊。単行本1992年1月白泉社。著者の最初の著作と知り、探しました。とても大きな挫折を経たフィギュアスケーターが信頼するコーチに再度見いだされ、ペアとして再起を挑む物語。パートナーは口が悪いが滑りはうまい。しかもどこか惹かれるものがある。こんなひねくれ男に惹かれるのか、疑問に思いつつも、そこはスケートという媒介があるからだろうな。スケートがなかったら、自分の取り柄がない主人公・可南子がらせん状に駆け上がる青春物語です。2015/07/31