内容説明
わたしは彼らと違うのだ。いかにむなしくても、それはどうしようもないことだ―。殿さまには殿さまの悩みがあって、些細な物事にも思いを馳せる(『殿さまの日』)。“ショートショートの神様”が、斬新な切り口によって描き出す傑作時代小説集第一弾。
著者等紹介
星新一[ホシシンイチ]
1926年東京生まれ。東京大学農学部卒業。68年『妄想銀行』で第21回日本推理作家協会賞受賞。ショートショートの第一人者として1001本を超える作品を発表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
50
もうすでに「殿様の日」と「城のなかの人」で読んでいて再読です。短篇というよりの中編があったりで楽しめます。時代小説ということでちょっとショートショートとは異なりますが、エンターテイメントとしてはいいのではないでしょうか?松本大洋さんのカバーや挿絵もあっている気がします。2015/01/09
森の三時
37
体調がいまいちなので短編を読もうとたまたま手に取った、星新一さんの中ではあまりに馴染みのない時代小説六編。江戸の武士たち、どれも労多くしてトホホな結末なところは星新一さんですね。あれやこれやと考えを巡らせ、やがて疑心暗鬼になり、議論をすればするほど真実から遠ざかっていったり、小悪事の積み重ねがだんだん麻痺してとんでもないことになったり、希望的観測を積み重ねて当てが外れてしまったり、事態を打開するつもりが見込み違いにより余計に悪化したり…。トホホ。2020/10/24
も
28
図書館でたまたま見つけた1冊。未来の話が多いイメージの星新一さんが時代小説を書いているとは!文体は星さんそのもので、皮肉な結末も星さんそのもの。今まで読んできた星さんとはまた違った一面を垣間見れたような気がして面白かった。続きも読もう~♪2015/05/04
にんじん
11
ショートショートの名手、星新一さんの時代小説集。こちらは短編~中編のくらいの長さのものを集めています。個人的に、星新一さんの作品はショートショートよりもこれくらいの長さの方が好みです。特に時代小説は良作揃いで、平易な語り口で入り込みやすく、予備知識がなくても楽しめるような工夫が見られるのも素晴らしいです。収録作の中では、ある藩主のなんということはない一日を描いた「殿さまの日」が好きです。この「平凡な一日」に至るまでの藩主の道程を感じさせる良作。2019/01/16
おMP夫人
9
有名で定番どころだけれど読んだ事のない作家さんというのは多くいるもので、私にとって星新一さんはその一人です。うっすら記憶にあるのは小学校の国語の教科書(調べてみたら「おみやげ」という作品でした)で、それ以来。なのにSF作家として有名な著者の中では異色な時代小説から読むというのはいかがなものかとも思いますが、これが面白い。お砂糖もミルクも入れないコーヒーのような味わい。一番好きなのは「殿さまの日」です。内容もとても好みでしたが、滑らかに物語の視点が殿さまとその外側を行き来するカメラワークが快感でした。2013/01/27