内容説明
2007年11月、人気作家を再びガンが襲った。痛みに眠れぬ夜を過ごし、築地を見おろしてグルメを考察し、死を思い、生をふり返る日々。もっと、もっと書こう。一行でも多く―告知から手術、退院までをかろやかに綴って、毎日を生きる勇気にあふれるエッセイ25篇。
目次
黄疸
宣告
ガンセンターへ
手術
集中治療室
ガン病棟のピーターラビット
グルメな築地
食べるということは…
入眠剤
看護婦さんたち〔ほか〕
著者等紹介
中島梓[ナカジマアズサ]
1953年生まれ。『コミュニケーション不全症候群』を始め、鋭い社会批評で知られる評論家。作詞作曲、ピアノ演奏、ミュージカルの脚本・演出を手がけるほか、小説家・栗本薫として『グイン・サーガ』『魔界水滸伝』『伊集院大介』シリーズなど多くのヒット作を持つ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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れみ
80
作家の中島梓さんのがん闘病記。図書館でたまたま目に留まり、知らない方だ…と思いながら借りてきたのに、10代の頃にルビー文庫とかで読んだことのある栗本薫さんの別ペンネームだった。迂闊…。ご本人が度々仰るようにすごく恵まれた贅沢な入院生活ではあるけど健康であるに越したことはないとも思うし、大病で人生観が変わるってよく言うけど、こういうことなのかな、こういうことでもないと自分にとって何が大事か真剣に考えないかもしれない…と思うようなエピソードもあり、軽い読み口の文章ではあるけど色々考えさせられるものがあった。2018/09/20
クリママ
49
私にとって「魔界水滸伝」全20巻の作者、栗本薫さんの闘病記。読みはじめは、独特の文体に少し読み辛さを感じた。記録魔の著者がその折々に書き記したものをまとめたもの。尋常でないかゆみから黄疸の発症で入院検査、胆管下部の癌とわかり、がんセンターへの転院から手術、術後の状態とその時々の感想まで、詳細に記されている。食べ物の好き嫌いなどかなり癖のある方、食事へのこだわりなど頷けることばかりではないが、術前術後の様子など率直に書かれ、癌闘病がとても怖くなってしまった。ただ、悲嘆に暮れることなく、執筆を続けられている⇒2023/10/21
りんご
43
「グイン・サーガ」栗本薫さんの別名義。知らなかったなー。この本はごく読みやすい闘病エッセイ。ちょいちょい出てくる(爆)が、なんつーの、時代というか、風習というか、味わいを感じますね。グインは読んでませんが、もしかしたら読んでもいいんじゃない?くらい、ほんの少しハードル下がりました。生きてる限りは生きて、でも死は忘れずに。誰だって死んだら終わるし死ぬまでは生きてる。2023/12/05
瑪瑙(サードニックス)
29
中島梓さんの闘病エッセイ。今岡清氏のエッセイを読んで知っていたピーターラビットの人形が、彼女の集中治療室に置かれていた場面では、やっぱりお気に入りだったのだなと思った。ガンになった事での治療の大変さ、そしてすい臓がんの発見の難しさを感じた。夫の知人がすい臓がんで長く闘病した末に亡くなられたので、膵臓癌と聞くとちょっと身構えてしまう。でも梓さんは飄々と、淡々と、ガンと向き合い、“死”とも向き合っている。自分は幸せだと言い切る。この後の『転移』も読みたいと思う。2025/02/20
杏子
15
亡くなられて、もうずいぶん経ったと思うのに、まだ生きておられるような錯覚をおぼえてしまうのに驚いた。まだ私の中には生きている、のだろう。こうして本を開けば、たちどころにして、彼女の言葉に出会えるのだから。どんなにワガママでも傲慢でも、栗本薫という作家は私の中では永遠だと思うし、その言葉を読むことは幸福なことなんだろう。亡くなられてから読んだが、それでよかったのかもしれない。かえってその言葉が身にしみてくるようで。あぁ…と思ってしまう自分がいた。2009/12/29