内容説明
緑の森にめぐまれ、太陽の光がふりそそぐ豊かなアルザス地方は、その場所のために、ドイツ領となったり、フランス領となったりしてきました。きょう、戦争によってこの地方はフランス領からドイツ領へとかわり、アメル先生は、フランス語による最後の授業をおこないます。そしてとうとう十二時、教会の鐘が鳴りはじめました…。小学校上級から。
著者等紹介
ドーデ,アルフォンス[ドーデ,アルフォンス]
1840年、南フランスのニームに生まれる。リヨン市の中学時代に一家が没落。1857年、パリで文学の勉強を始める。1858年に処女詩集を発表。1860年から65年にかけて立法議会議長モルニ公爵の秘書をしながら文学の道に励む。1897年、パリで死去
南本史[ミナミモトチカ]
1933年、京都に生まれる。日仏学院を経て、京都大学仏文科の聴講生となり、フランス文学を学ぶ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
36
戦争による影響を書く物語は断定的に締めくくられ、人に飼われることを良しとしない山羊は狼に襲われ、血まみれになって死んでいきます。断ち切られた瞬間を描く短編、十二編を集めたこの本は公のなかの個人に思いを至らせます。公の中の個は、ともするとその安心感から根拠のない「自分だけは大丈夫」という思いを持つ。しかしどれほど多くの集団に囲まれていても、自分はただ一人の自分であり、決定的な力や出来事の前になすすべもなく蹂躙されることもあるのです。静かな文体の底に見つめるべき真実の一面があることをそっとしのばせた物語です。2017/05/24
まるほ
26
ある年代以上の人ならば、教科書で読んだことがあるであろう本作を含む12の物語からなる短編集。『23分間の奇跡』という作品を読むにあたり、その前提としてとりあえず本作を再度読み直すために手にする。▼この物語、現在では教科書に掲載されていないとのこと。政治的なバイアスが強いことが理由らしい…。児童書の体裁をとっているし、舞台となっている地方の歴史的な経緯を知らないと、作者が意図的に隠微している政治性は分かるはずはないよなぁ…。▼『23分間の奇跡』にも共通するテーマであるが、“教育”の重要性がよくわかる。2019/10/11
まるほ
23
もともと『最後の授業』を読むために図書館から借りた本であったが、他の短編を読まずに返却するのもいかがなものかと、残りの短編11話を読む。▼初期に成功した短編集『風車小屋だより』からの3編と普仏戦争・パリコミューン後に発表された短編集『月曜物語』からの8編。恥ずかしながら正直に言うと、いわゆる“文学作品”になるのだろうか、あまり印象に残らず、面白みも感じなかった…。特に『月曜物語』からの話は、時代背景を踏まえないと話自体よく理解できないのではないかな…。▼児童向けとして、ひらがな書きが多い文体もキツかった。2019/10/20
aof
7
今だからこそ、読みたい。 〈教育などは明日に延ばしてきたのが、わがアルザスの大きな不幸だった。〉 教育が守られていること、日常が失われないこと。そして、社会の歪みの矛先を子どもに向けないこと。 どれも今こそ、本気で考えないとと思う。2020/02/29
Miyoshi Hirotaka
6
簡単に先送りできることは、実は最も大切で、突然訪れる変化により、失うものの大きさが分かる。小説の舞台は、占領すれば相手の言葉を奪うのが当然だった19世紀後半。最後のフランス語での授業が行われる。こうなったのは、教育の軽視が原因で、勉強しない生徒だけでなく、させない親、教えない教師に責任がある。しかし、自分の国の言葉をしっかり持ち続ければ自分の牢のカギをもっているようなものと生徒に訴える。過去には教科書に採用された名作。耳が痛いとともにグローバル化時代での国語教育の重要性を感じる。2013/01/02
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