出版社内容情報
ある日ほのかは、エレベーターの中に怖い顔の置物があるのを見つけた。それは、隣のおばあさんの家の蔵に住むつくも神だった!
内容説明
マンションの放火騒ぎの翌日、ほのかはエレベーターの中に、こわい顔をした奇妙な置物があるのを見つけた。それ以来、ほのかと兄の雄一のまわりで不思議な事件が続く。ほのかはなぜか隣の家のおばあさんと土蔵にひかれてゆくが…。長い時を経て魂を宿した道具たち、「つくも神」の物語。
著者等紹介
伊藤遊[イトウユウ]
1959年、京都市に生まれる。立命館大学文学部史学科卒業。平安時代を舞台にしたファンタジー『鬼の橋』(1999年産経児童出版文化賞推薦、IBBYオナーリスト2000文学作品)、『えんの松原』(2002年日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞)を発表し注目を集める。『ユウキ』(2004年日本児童文学者協会賞/いずれも福音館書店)で現代の子どもを描く。札幌市在住
岡本順[オカモトジュン]
1962年、愛知県に生まれる。神奈川県在住
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さつき
71
五年生のほのかの日常は、グレてしまったお兄ちゃんに神経をとがらせるお母さん、そして口煩いご近所さん、最近話しが合わなくなった友達などに囲まれて心休まる時がありません。ピリピリと張り詰めたほのかの前に現れたつくも神はどこか抜けていて憎めない存在です。古物が命を持ち化けるようになったつくも神は愛情深く楽しい人達ですが、物事を魔法みたいに解決してはくれません。誰かと分かり合うにも、問題を解決するにも自分で動かないと前には進まない。家族や友達、地域の人との繋がりをもう一度考え直したいと思わせてくれる作品です。2023/03/24
☆よいこ
66
再読。中学生の兄、雄一(ゆういち)がグレて、お母さんはイライラしている。ほのかは、お兄ちゃんが嫌いじゃないのに、周りから「不良の妹」扱いされて友達ともうまくいかない感じ。マンションの放火騒ぎの次の日、ほのかは、エレベーターでこわい顔の置物を目撃する。更に隣の家の庭にある土蔵からは怪しい気配がするし、不思議な出来事が続く。雄一とほのかの前にあらわれた怪しいものは、古いものが姿を変えた「つくも神」だった。▽友人関係、家族との関係に悩む主人公に勇気を与えたものは、過去の楽しい思い出だった。物を大切にしよう。2019/08/06
ぶんこ
66
畠中恵さんの妖は江戸時代。 こちらは現代のつくも神でした。 古くから大事にされてきた物に宿る神様つくも。 日本のこういった大らかな信仰はいいですね。 不良グループに入ってしまったお兄ちゃんを心配するほのかちゃんが健気で、お兄ちゃんやお隣のチヨお婆さんを助けるネツケ、フロシキ、キセル、ウス、ショウキ。 助ける過程で少し壊れてしまいます。 なおって活躍できるようになって欲しいです。 雄一君と龍平君が不良グループから無事にぬけだせるといいですね。2015/12/15
カピバラ
64
つくも神、いいな~。ネツケが変身した姿が愛らしくて家に付喪神がいたらいいな~と思わずにはいられない。児童文学としての魅力もあってよかった。少女特有の友人関係の悩みやお兄ちゃんで描かれている青少年の非行(盗んだバイクで走りだす的な)、お婆ちゃんの温かさ、ご近所の意地悪なおしゃべりおばさん・・・エッセンスはそこらしこにたっぷり。ジブリかスタジオ地図でアニメ化してほしい。2015/10/21
がらくたどん
58
大人達が建て替えで揉めるマンションに住むほのかちゃん。彼女の周りも子どもながらに大揺れ小揺れ。お兄ちゃんは中学性になって不良になった。変な袴姿の蛙や厳めしい顔の動く人形や暗がりを飛ぶ鳥が見える。近所で火事が増えた。少女が見つめる「人間の事情」を縫うように小さな不思議なモノ達が跳ね睨み飛ぶ。彼らの譲れない「事情」のために。彼らの事情はシンプルで思いは一直線。護りたいのだ。それを!その渦が図らずも人の事情を解きほぐす。思い出があるから。道具に宿る「つくも」の力は「それ」と共に過ごして沁み込んだ記憶の力だ。秀作2025/02/21
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- 和書
- 山河あり