出版社内容情報
戦争はどのように描かれてきたのか。体験者が徐々に減り、徴兵制もない日本において、戦争の理解や想像力、記憶の継承を培う手がかりとして、表象は圧倒的な力を持つ。本書は最前線の研究者9人がアニメーション、映画、マンガ、ゲームをとりあげ、戦争表象の特質や変化を検討する。『この世界の片隅に』『永遠の0』など大ヒット作から戦争ゲーム、ドキュメンタリーまで広範に取り上げた刺激的な論文集。
【目次】
序論1 戦争の表象と「戦後」:表象の力学【中尾知代】
序論2 戦後社会における「戦争の表象」へのアプローチ【堀ひかり】
第I部 「反戦」とは何か、戦争批判とは何か
第1章 「反戦でない」アニメーションはいかに作られるか【大塚英志】
第2章 『リーンの翼』にみる富野由悠季とアジア・太平洋戦争【藤津亮太】
第3章 現代日本社会の戦争表象における「共感」と「反戦」の変容:『永遠の0』『風立ちぬ』『アルキメデスの大戦』を中心に【山本昭宏】
第II部 戦争を読む、見る、描く、プレイする
第4章 「戦い」と「平和」の葛藤が生み出すドラマツルギー:ヒーロー物語の正義とリアリティ【足立加勇】
第5章 アニメーション映画『この世界の片隅に』における戦艦青葉の空中浮揚【キム・ジュニアン】
第6章 FPS戦争ゲームにみる「軍事化」のプロセス:『Call of Duty: Modern Warfare』(2019)から見えるもの【関根里奈子】
第III部 捕虜・兵士・民間人の戦争を考える
第7章 捕虜映画・戦争映画としての『戦場のメリークリスマス』【中尾知代】
第8章 戦後日本映画と「加害者のトラウマ」試論:『戦場でワルツを』と『ゆきゆきて、神軍』をつなぐ【堀ひかり】
第9章 女性生存者の「沈黙の声」と語り:済州四・三ドキュメンタリーから【梁仁實】
あとがき