出版社内容情報
固有名はその対象と不可分に結びついた唯一無二のものである一方で、代替可能な単なる記号でもあるという両義性を有する。固有名を介して、現実と虚構が接続される。本書は中世から現代までのドイツ語圏の文学における固有名の機能を、〈産出性〉、〈虚構性〉、〈否定性〉という三つのキーワードのもとに、解明する。
目次
固有名の詩学のための序論
第1部 産出性(作者と名前―ドイツ盛期中世俗語文芸における作者;『ジーベンケース』における名前の交換;呼びかけ・主体化・服従化―トーマス・マン『トニオ・クレーガー』における名前;リルケ作品における名づけと呼びかけ;インゲボルク・バッハマン『ボヘミアは海辺にある』における固有名の神話化作用)
第2部 虚構性(ヘルダーリンの頌歌『キロン』における固有名の機能;ジャン・パウル『自叙伝』における固有名「パウル」;ホフマンとディドロ―継承と呼応;トーマス・マン『すげ替えられた首』における「体を表す名」と「神話の名」;ウィーンの(脱)魔術化―ハイミート・フォン・ドーデラーとインゲボルク・バッハマンのウィーン)
第3部 否定性(Nemo mihi nomen―あるアナグラムの系譜;ベルリンは存在しない―ウーヴェ・ヨーンゾンにおける境界と名称;断片としての名―インゲボルク・バッハマンにおける固有名の否定性)
著者等紹介
前田佳一[マエダケイイチ]
1983年生まれ。お茶の水女子大学基幹研究院助教。東京大学大学院人文社会系研究科博士後期課程単位取得退学。博士(文学)。専攻は近現代ドイツ文学、オーストリア文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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