内容説明
叙事詩、ロマンスから“ノヴェル”へ。内部で諸ジャンルが角逐・葛藤するイギリス近代小説。小説草創期の作家たちが置かれていた文学的ミリューの復元を試みる。
目次
序論
第1章 小説の“起源”をめぐって
第2章 古代ロマンス/小説の翻訳
第3章 ロマンスの変容
第4章 ピカレスク小説再考
第5章 “ノヴェル”への胎動―“散文”の勃興(1)
第6章 “ノヴェル”のための技法―“散文”の勃興(2)
第7章 叙事詩、ロマンス、“ノヴェル”
著者等紹介
伊藤誓[イトウチカイ]
1951年、三重県に生まれる。東京教育大学大学院修士課程修了。京都教育大学、東京学芸大学、大妻女子大学を経て、1991年、東京都立大学人文学部助教授、98年、同教授、首都大学東京大学院人文科学研究科教授、イギリス小説専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鏡裕之
1
近代小説は18世紀イギリスで始まったと説く、文学論の古典、イアン・ワット『小説の勃興』に対して、著者は異議を唱える。曰く、ロマンスから小説へと直線的に進んだわけではない。ロマンス自身も変化していたし、小説とロマンスの中間段階的なノヴェッラもイタリアで生まれていた。ただ、ワットが唱える小説の定義をリアリズム小説限定で範囲が狭いと批判するのはどうなのか。批判する著者は有用な定義を提供できているのか。拠って立つのはバフチンの定義のようだが、ワットの代わりに小説発展の明解な見取り図を出すことはできていない。2025/04/22
brzbb
0
古代から中世、近代小説が生まれる前夜までの「小説的なもの」の系譜。ゴシック小説のルーツを調べようとして読んだ本だけど、ゴシック小説については論じられてはなかったんだけど、いろいろ知らないことが多くて興味深かった。知識なさすぎて流し読みになっちゃったところも多かったけど。あと、「中世フェミニズムの消長」以降の部分、中世の女性作家の系譜についても興味深かった。『女たちの町の書』翻訳されないかなあ。2021/11/17