出版社内容情報
シベリアの強制収容所を生き延びた詩人・石原吉郎(1915?1977)。難解さをもって知られる詩人のテクストの「構造」に初めて全面的に焦点をあて、解きほぐす画期的な試み。理性の外部にあるもの、すなわち「他者」への呼びかけ、「世界」の現出、そして両者が顕れる場そのものとしての「言語」。詩の構造を精緻に分析することでしかその核には迫れない。生誕110年、石原作品読解の到達点。
【目次】
Ⅰ
第1章 石原吉郎の詩における他者のトポロジー
はじめに──詩、他者
1 詩集『サンチョ・パンサの帰郷』における書物と証言
(1) 書物
(2) 証言──冒頭の四篇
(3) 構成──綱領、シベリア、男
2 詩《位置》──土の次元、空の次元
(1) 位置
(2) 敵
(3) 土と空
3 詩《やぽんすきい・ぼおぐ》──去勢、お(の)れ
(1) シベリア連作
(2) 日本の神、陰茎
(3) 去勢
(4) お(の)れ、証言
おわりに
Ⅱ
第2章 兇器の時
はじめに
1 道具、武器、兇器
2 「日」と「ひとつのとき」
3 「うす目」の証言
4 自由の時──その他の収容所詩篇
第3章 風の顕れ
1 「名づけ」としての風──詩集『禮節』の諸詩篇
2 風という「もの」──詩《陸南風》(一)
3 風、望郷──詩《陸南風》(二)
第4章 うずくまる
1 海を流れる河
2 うずくまる(一)──「条件」の放棄
3 うずくまる(二)──「現在」という時間
4 水準原点
第5章 サンチョ・パンサの帰郷──石原吉郎と三井葉子
1 詩人の帰郷
2 主体の諸層
3 権威を地におろす
4 位置
5 去勢とは何か
6 位置も動く
第6章 世界がほろびる日に
1 終末ブームとカール・バルト
2 個の終末と世界の終末
3 世界がほろびる日に(一)──ユーモア、終末と日常
4 世界がほろびる日に(二)──自我と時間の二重化
5 おわりに──石原吉郎の死
第7章 斧の思想
1 詩集『斧の思想』の位置
2 詩《斧の思想》の構成
3 提示部──森、斧、風
4 展開部(1)──声
5 展開部(2)──刃
6 展開部(3)──静寂、みどり
7 結論部(1)──斧の顔
8 結論部(2)──第一詩集のほうから



