出版社内容情報
戦後の科学的歴史学を理論的にリードし,学問の民衆的地盤と思想的骨格を問い続けた著者の,古代史と現代史,文学と歴史,歴史学の課題と方法等をめぐる59篇。
感想・レビュー
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浅香山三郎
10
1977年刊。600頁を超へる論集である。Ⅰ・Ⅱは、『歴史と民族の発見』の問題意識にも通じ、民族性を歴史的に検討する。古典文学を素材に、中世の社会・国家・民衆のあり方見ようといふ視点は、後の社会史ブームで注目されるやうになるが、石母田の仕事はその流れとは別に先駆的だつたのではないか。また、「国民的歴史学運動」といふものを知る上でも示唆に富む。古代・中世の研究者としての枠に留まらず、Ⅲ章以降の時評や書評により、広い関心・問題意識を示してゐることは、著者も旗手の一人だつた戦後歴史学の時代の雰囲気がよく伝はる。2024/04/05