眩暈(めまい) (新装版)

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  • サイズ B6判/ページ数 510p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784588120169
  • NDC分類 943
  • Cコード C0097

出版社内容情報

万巻の書に埋もれた一東洋学者が,非人間的群衆世界の渦に巻き込まれ,発狂して自己破滅するに至る異常の物語。群衆と権力をテーマに狂気の現代を鋭く抉った長篇。

内容説明

ノーベル賞作家カネッティの長編小説。万巻の書に埋もれた一東洋学者が非人間的な群衆世界の渦に巻き込まれ、発狂して自己と書庫とを破壊するにいたる異常の物語。「群衆と権力」をテーマに錯綜する狂気と錯乱の風景を描き、解し難く浅薄な「現代」を深く烈しく抉り、トーマス・マンにその氾濫する想像力と構想筆致を驚嘆させた二十世紀ドイツ文学を代表する傑作。

著者等紹介

カネッティ,エリアス[カネッティ,エリアス][Canetti,Elias]
1905年、ブルガリアのスパニオル(15世紀にスペインを追われたユダヤ人の子孫)の家庭に生まれ、少年時代をヨーロッパ各地で過ごし、ヴィーン大学で化学を専攻、のちイギリスに亡命し、群衆・権力・死・変身をテーマにした著作をドイツ語で発表。1994年8月14日チューリヒで死去、89歳。1981年度ノーベル文学賞受賞

池内紀[イケウチオサム]
1940年姫路市生まれ。ドイツ文学者
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ケイ

150
冒頭のキーンと少年の会話からは、中華哲学や思想に発展する話かと思いきや…疲れた。彼らの狂気に引きずられ、引き込まれてしまった。ああ、ここでこうすればいいのに、なんていちいち思うからいけないのだ、こちらも。彼らにまともな忠告なんて、暖簾に腕押し。エゴ、執着の応酬。勝手にやってくれ。精神の平和は、そういったものからは決してもたらされることはないのだと、再認識させられた。こちらも作者の長い劇によく付き合ったものだと苦笑するような書物だった。2017/07/12

まふ

110
中国研究の大家である民間学者ペーター・キーン博士は2万5千冊の蔵書を誇る蒐集家であり、蔵書の取扱いに異常な執念を見せる。この偏執狂的な蔵書保管基準に合格した家政婦テレーゼを妻とするが、この妻が実はクセアリで二人の仲は忽ち分裂し博士は自分の家を追い出されてしまう。その後も読者はどこか軸のずれたトンデモナイ(いかにもドイツ文学的!)物語の世界に連れられてゆき、偏執狂的なこだわりの中にネジこまれてただオロオロするばかりだ…。ノーベル賞にふさわしい(!)クセアリのワザあり一書であった。G474/1000。2024/03/29

syaori

67
26歳の作者が上梓した”人間喜劇”。主人公の世界が書籍を中心に回っているように、彼の妻が奇妙な外套への注目を自分の魅力と見るように、人は自身の興味や自意識を通して世界を見るものですが、それがここでは幻想的に象徴的に緻密に誇張されていて、笑いを誘う登場人物たちの自意識と相互の世界のズレが、徐々に何と不安なものになることか。しかしこの”何ぴとも他の誰かを理解しない””しようと望まない”という非情な真理と、それがもたらす破滅・脅威をグロテスクな笑いに包んで示しているのがこの奇怪な喜劇の魅力のようにも思います。2022/05/05

tomo*tin

31
例えば脳内に発狂スイッチなるものがあったとする。それも5段階のシフトチェンジができる感じの。最強を5だとして、それを連続で365日入れっ放しにされたらどうなるだろう?正常ではいられないよね、なんたって発狂スイッチだし。じゃあ、本人が気づかぬうちにスイッチオフしたら異常ではなくなるだろうか。きちんと反応できるだろうか。その場合、どこからが異常でどこからが正常だという境界は見えるのだろうか。何はともあれ、壮絶に濃密で、過激に狂気で、猛烈に変態だった。きつかった。すごかった。これは、やばい。2009/08/06

彩菜

28
人は自分の認識の世界を生きており、それは一人ひとり別々の星に生きるようなものではないか。この物語の人々はそのように自分の世界だけに生き、互いに交わる事がない。一つの事象は各々の内部で別々の形を取り、別々の物語になり、言葉は空しくすれ違う…この相互の世界のズレは初め喜劇的なのだが、主人公の転落と共に深刻さと禍々しさを増してゆき、最後は狂気の炎が物語の幕を引く事となる。「多くの人々が狂人となる。彼等の内なる群衆が(略)充足を見出だせないせいだ」。→2024/02/12

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