内容説明
倫理を技術に対峙させることをやめて、我々は、技術との相互作用のなかで自分達の生を形成していくための語彙や実践を作り出さねばならない。倫理においては、人間と技術の双方が本質的な役割を果たしている。技術の使用者である人間の道徳から、人間と機械の相互作用の中にある道徳へ。フーコー、ラトゥール、スローターダイクなどを駆使して、ポスト現象学の立場から、技術倫理と科学技術社会論(STS)を刷新する新しい“技術哲学”の誕生。
目次
第1章 媒介された道徳
第2章 ヒューマニズム的でない技術倫理
第3章 人工物は道徳性を持つか
第4章 技術と道徳的主体
第5章 設計における道徳
第6章 道徳的環境―具体的応用事例
第7章 媒介を超えた道徳
第8章 結論―技術に同行する
著者等紹介
フェルベーク,ピーター=ポール[フェルベーク,ピーターポール] [Verbeek,Peter‐Paul]
1970年、オランダ生まれ。現在、オランダのトゥエンテ大学(The University of Twente)哲学科の教授。The Society for Philosophy and Technology(SPT)の会長(President)
鈴木俊洋[スズキトシヒロ]
1968年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程修了。博士(学術)。現在、上智大学理工学部ほか非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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1994
1
I先生の授業で学んだことが網羅的につながる本。ハイデガー、フーコー、ないしラ・トゥールの立場を丁寧に説明しながら批判的に継承して内容展開されていくため、現代のポスト現象主義の到達点を明瞭に理解することが出来る。現象主義の考え方を、AI技術受容等の現代的な問題と関連させて実践的に検証していくため、実感を伴って理解していくことが出来る。フーコーが言う所の「自由」は、最近クレージージャーニーを見て個人的に定義した「自由」の意味と合致していた様に思えて嬉しかった。2019/03/25
たろーたん
0
倫理学ではもともと客体はあまり重要と考えられなかった。あくまで人間が使うモノ・道具としてしか考えられてなかった。フェルベールはそれに対して、客体が主体に与える影響を考察した。人が客体・道具を使って何かをするだけではない。客体は人に様々な影響を与えるし、人の在り方を規定したり、人を特定の在り方で主体化したりする。そのことを倫理学に突っ込んだんだよね。だから、倫理学の新たなお仕事は、その客体が孕んでいる政治性や人間への影響を見ることなんじゃないかな。2017/06/20