叢書・ウニベルシタス
ロマン主義―あるドイツ的な事件

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  • サイズ B6判/ページ数 470p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784588009501
  • NDC分類 134.04
  • Cコード C1310

内容説明

神を失った世俗的世界に、ふたたび古代の夢と神秘、無限なるものを甦らせるロマン主義。伝統と創造、革命と反動を同時に内包するイローニッシュなこの運動は、文学的天才たちの共同体を生み出したのち、やがて巨大な廃墟をもたらす民族の政治宗教となった。「遅れてきた国民」の近代200年にわたる思想経験を、ロマン派の来歴と転変から描きだす精神史の白眉。

目次

第1部 ロマン主義(ロマン主義の発端―ヘルダー海へ出る。文化を新たに発明する。個人主義と諸民族の声。時流の中で揺れ動く物事について。;政治的革命から美的革命へ。政治的無力と詩的大胆さ。シラーは人々を偉大な遊戯へと駆り立てる。ロマン派は登場の準備をする。;インク染みの時代。啓蒙主義的な思慮分別からの離別。奇異から奇跡へ。フリードリヒ・シュレーゲルとイロニーの履歴。美しき混沌。批評の独裁者の時代。世界を芸術作品と化す。;フィヒテ、および一個の自我たらんとするロマン主義的な欲望。心の過剰。無からの創造。ロマン派の社交生活。伝説となったイェーナの住居共同体。精神的高揚、そして墜落への不安。;ルートヴィヒ・ティーク。文学工場にて。ウィリアム・ロヴェルの過剰な自我。文学風刺。著述の名人が芸術信仰者ヴァッケンローダーに出会う。夢の実現を追求するふたりの友。月光照らす魔法の夜とデューラーの時代。薄明の中のヴィーナス山。フランツ・シュテルンバルトの遍歴。 ほか)
第2部 ロマン的なるもの(理念の混沌を回顧する。ロマン主義批判者としてのヘーゲル。世界精神の号令と傲慢な主観。ビーダーマイアーと青年ドイツ派。現実的な現実への途上で。暴露競争。天の批判、大地と肉体の発見。ロマン主義的な未来、散文的な現在。シュトラウス。フォイエルバッハ。マルクス。両陣営に挟まれたハイネ。ロマン派への決別とナイチンゲールの擁護。人類解放戦争の兵士、詩人になっただけ。;青年ドイツ派ヴァーグナー。パリのリエンツィ。ドレスデンのロマン主義革命家。初期ロマン派の夢―新しい神話―の実現。ニーベルングの指環。いかにして自由な人間が神々の黄昏をもたらすか。反資本主義と反ユダヤ主義。神話的な体験。トリスタンとロマンティックな夜。象徴的な陶酔。五感への総攻撃。;ニーチェのヴァーグナー評―初の芸術世界周航。時代の非ロマン主義的精神―唯物主義、現実主義、歴史主義。矯正施設。ディオニュソス的なるもののロマン主義。世界言語たる音楽。ニーチェのヴァーグナーからの離反―救済者の救済。大地に忠実であること。ヘラクレイトスとシラーの戯れる宇宙児。イローニッシュな抵抗の終焉。崩壊。;生、生あるのみ。青年運動。生の改善。ランダウアー。神秘主義の侵入。フーゴ・フォン・ホフマンスタール、リルケとシュテファン・ゲオルゲ。ヴィルヘルム二世治下の書割魔術―艦隊建造の「鋼鉄のロマン主義」。一九一四年の理念。戦時下のトーマス・マン。倫理的雰囲気、ファウストめいた香気、十字架、死と墓穴。;魔の山から平地へ。ランゲマルク。両世界間のさすらい人。二つの冒険心―エルンスト・ユンガーとフランツ・ユング。テューリンゲンの流行性舞踏病。東洋への旅立ち。無理をした即物主義。偉大なる瞬間への期待。共和制末期の爆発的な古めかしさ。ハイデガーの政治的ロマン主義。 ほか)

著者等紹介

ザフランスキー,リュディガー[ザフランスキー,リュディガー][Safranski,R¨udiger]
1945年生まれ。哲学博士。フランクフルト大学でドイツ文学、哲学、歴史を学び、ベルリン自由大学のドイツ文学科の助手、講師を経て、『ベルリナー・ヘフト』誌の編集者としてジャーナリズムで活躍。広く成人教育や市民大学にかかわる。現在は思想家・作家について独特な評伝の領野を切り拓いて活動している

津山拓也[ツヤマタクヤ]
1962年佐賀県生まれ。東京外国語大学大学院修士課程(独文学専攻)修了。現在、東京外国語大学・二松学舎大学・國學院大學・中央学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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さえきかずひこ

9
ロマン主義の誕生から、その変遷を20世紀のドイツ社会にまで展望する大著。ザフランスキーの結論は、ロマン主義は必要だが、政治の領域からは切り離しておかねばならないというもの。ニーチェとワーグナーの藝術観の対立について『ニーチェ』に引き続き詳述されており、彼はこのモチーフが随分と気に入っているように見受けられる。また、ハイデガーやナチズムとロマン主義の関わりについても触れられている。『E.T.A.ホフマン』と『ニーチェ』両著との重複部分があるが、愛読者なら楽しめるだろうし、未読ならそちらにも手を伸ばしてよい。2018/05/20

iwri

8
第一部では初期ロマン派から後期ロマン派、特にホフマンとアイヒェンドルフ、までの狭義のドイツ・ロマン派の史的経過をあとづける。第二部では、ニーチェ・ワーグナー・新ロマン派・ナチスとの関わり・68年運動と言った、ドイツ精神史に流れる広義のロマン主義的な精神運動を描く。ドイツ・ロマン派に関する良い入門書。ノヴァーリス研究者の今泉文子が指摘するように、毀誉褒貶激しいロマン派的な精神性が、ドイツ的なものとしてドイツの精神史/文化史の底流を流れていることを感じる。2012/06/10

999

2
まあ面白かった。書き出しがワクワクする。ロマン主義とは既知のものに未知の厳かな威厳を、有限なものに無限の外見を与えるものとしてドイツから生まれた。ドイツでは白昼夢三昧の幻想と揶揄されているらしいが現代にこそ価値のある思想ではないかと思う。研ぎ澄まされた理性と蔓延する妥協の中に一つ、このロマン的なものがあってもいいと思う。そうした意味でも読んでいて楽しかった。2018/12/08

ダイキ

0
図書館。「最後にヘルダーリンに残ったのは彼の神々だけだった。しかし、もはや他者と分かち合わない神々は消え去る。独りでは神々を引き止められないので、彼は神々の後を追って行った。最初、神々は彼のために古典古代の絵(イメージ)から抜け出て顕現した。それから彼は神々を自分の言葉が描く絵に移し変えたのだが、最後には彼自身が絵の中に消えたのだ。」〈第1部 ロマン主義 第8章〉2017/07/16

dely

0
文体からしてロマン的なザフランスキーが、ロマン主義について書いている。夢、空想、また現実の美化に心血を注ぐ人々の姿は、オタク趣味の持ち主なら他人事ではないかも。2011/03/27

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