出版社内容情報
現代の科学技術がコミュニケーションのネットワーク上に実現したさまざまなメッセージ伝達システムを〈天使〉のアナロジーにおいて捉え,現代の神話として描く。
内容説明
現代世界のさまざまなメッセージ伝達システムを一神教的神学における天使=メッセンジャーのアナロジーにおいて捉え、無数の天使たちが物質と精神の媒介者となって飛び交い、未知なる文化を創出する新たな神話の時代の到来を告知する。
目次
薄明
曙光
朝
昼
午後
夜景
真夜中
著者等紹介
セール,ミッシェル[セール,ミッシェル][Serres,Michel]
1930年フランス南西部アジャンに生まれる。海軍兵学校、高等師範学校を卒業。数学、文学、哲学の学位を取得。1958年からクレルモン=フェランの文学部で10年間教鞭をとり、ライプニッツ研究で文学博士となる。1969年からパリ第一大学教授として科学史講座を担当。数学、物理学、生物学の研究の上に人類学、宗教学、文学等の人間諸科学に通暁する百科全書的哲学者としてフランス思想界の重要な一翼を担う。科学的認識と詩学とを統一的な視野に収め、西欧的思考の限界に挑む
及川馥[オイカワカオル]
1932年生。茨城大学名誉教授。愛国学園大学人間文化学部教授
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感想・レビュー
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ひばりん
13
後期セールの代表作と言って良いのではないか。まず天使の概念が定義される。コミュニケーションは媒介者(=天使)が見えなくなればなるほどスムーズに進行する。天使が見えてしまう時、天使は堕落し悪い天使となる(フェイクニュースや陰謀論)。天使の善悪を裁けるのか?その前提となる天使の認識論(出現論)を展開するべく、天使を「前置詞」によって近似する。たとえばformationがinformationとなるとき、inは見えなくなるが世界の流れが変わる。天使の言語的な現れは斯くの如しだが、子供の無邪気な目にしか見えない。2021/10/26
roughfractus02
7
一見本書は神と人を媒介するメッセンジャーとしての天使がテーマに見える。が、空港での男女の会話という設定でキリスト教的天使観を日常の話と哲学議論を自在に動き回る話ぶりは、「薄明」から喧騒の昼と夜を経て静まり返る「真夜中」へと各章を巡りながら本書の頁を流体化し、多数収録された天使の図版の視覚イメージを文字と共に押し流すかのようだ。著者は子供にしか見えないと言われる天使を、コミュニケーションが成立すると排除されるホワイトノイズへと拡張する。An angel passes!(会話が途切れた際に発せされる常套句。)2024/09/07