出版社内容情報
「近代」のトータルな把握を試み,16世紀のルネサンス人文主義から20世紀中葉に至る西欧の科学・政治・文化思想史を検討して「近代」理解の新たな視点を提示。
内容説明
近代いわゆる17世紀以後の科学的合理主義は果たして豊かで輝かしい歴史であったのか。「近代」のトータルな見直しを図り、人間性あふれたルネサンス人文主義と熟達した技術が調和した新たな近代を21世紀に展望する。
目次
プロローグ 第三千年期への後退
第1章 近代の問題とは何か
第2章 一七世紀反ルネサンス
第3章 近代の世界観
第4章 近代の彼方
第5章 前方の道
エピローグ 再び、未来を正視する
著者等紹介
トゥールミン,スティーヴン[トゥールミン,スティーヴン][Toulmin,Stephen]
1922年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学キングズ・カレッジで数学および物理学を専攻。第二次大戦中は軍事やレーダー研究に従事。戦後同大学に戻り、48年に論文「倫理学における理性の位置」で博士号を取得。この時期にウィトゲンシュタインに出会い、近代合理主義にきわめて懐疑的なその思想に決定的な影響を受ける。その後、オックスフォード、リーズ、シカゴ大学などで科学哲学を講じ、69年アメリカに帰化。現在は南カリフォルニア大学教授。医療倫理問題、家族問題、大学教育制度改革に参画する「実践の哲学者」として国内外を問わず活動し、再三にわたり来日、講演などを行っている
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感想・レビュー
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白義
9
「すべてはばらばらの破片となり、すべての統一は失われた」これは311震災を評した現代思想家の言葉ではない。17世紀の詩人ジョン・ダンが、当時の科学の発展がかつてのコスモロジーを衰退させ、後の宗教戦争を予感させる政治的不安が蔓延る危機の時代に書いた詩である。本書でトゥールミンは、近代を科学革命以来の、光輝く理性の進展と見る俗説を廃し、デカルトやガリレオの「確実性の探求」は近代の第二段階にして第一段階たる寛容のルネサンスへの反逆であり、その歩みもけっしてまっすぐなものではなかったと論じている2013/03/20
ぽてと
0
著者曰く、近代には三つの段階があるという。第一段階がモンテーニュやシェイクスピア、寛容性や多様性に、第二段階がデカルトやニュートン、安定性、画一性、階層性、二項対立に代表され、そして第三段階のモダニティがリオタールが主張するところのポストモダンである。トゥールミンは第三段階である現代は第一の時代に回帰しているし、そうなるべきと述べる。彼自身も言う通り、最終的な結論は楽観的ではあると思う。が、この本は近代とは何かという巨大かつ不可避の問いに対して一定の解答を導き出しており、大いに参考になる。2016/04/07