出版社内容情報
ミケランジェロの伝記中の嘘を詩的レトリックとして読み解くことを糸口として,芸術家たちの自己成型の伝統を探り,ルネサンス芸術の詩的 = 伝記的根源に迫る。
内容説明
おのれの生涯をも芸術たらしめたミケランジェロ。その伝記に散見する嘘を詩的レトリックとして読み直すことで、芸術家たちの自己成型の伝統を探り、ルネサンス美術の詩的=伝記的根源に迫る。
目次
ミケランジェロの詩的起源
芸術の牧歌的起源
詩というかたちであらわされた自伝
自己創造
牧歌詩人として描かれたペルソナ
石の田園生活
未完成の詩学
グロテスクと牧歌
牧歌のさまざまな異作
ミケランジェロの神話とロレンツォ豪華公
欺瞞としての芸術
虚偽をあらわす美術
捏造された人生
芸術としての伝記
ミケランジェロの転身
エリュシオン
著者等紹介
バロルスキー,ポール[バロルスキー,ポール][Barolsky,Paul]
1941年生まれ。ミドルベリー大学を卒業後、ハーバード大学で博士号を取得。1969年からヴァージニア大学に奉職。現在、美術史学教授。イタリア・ルネサンスの専門家
尾崎彰宏[オザキアキヒロ]
1955年、福井生まれ。東北大学文学部卒業。専攻は美学・西洋美術史。東北大学大学院文学研究科教授
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感想・レビュー
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新地学@児童書病発動中
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詩人としてのミケランジェロを紹介し、この芸術家の生き方を再検討する本。聖人扱いされている人物の人間くさい一面が浮かび上がってくる。偉大な芸術家も、私達のような普通の人々と変わらないところを持っていることが分かる。ミケランジェロは作品の制作に精魂を傾けながら、自分の家柄や業績を飾り立てようとする人物であったようだ。自分を良く見せようとするためのレトリックが、詩だったと著者は述べる。ただし、そのレトリックはイタリアのルネサンスの伝統に連なる牧歌的世界への憧れであり、題の牧神とはミケランジェロ自身のことだ。2018/01/24