出版社内容情報
第29回日本翻訳出版文化賞受賞 ヴェルヌの〈驚異の旅〉の神話的構造を解析し,その壮大な作品群を「SFの元祖」という定説から解放して,諸神話による神話の創造(神話大全)として読み解く。
内容説明
ギリシア・ローマ神話から聖書、聖者伝、さらにはデュメジルやフレイザー等の厖大な文献を渉猟しつつヴェルヌの〈驚異の旅〉の神話的構造を解析し、その壮大な作品群を「SFの元祖」という定説から解放して、諸神話を重ね合わせた〈神話大全〉として読み解く。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひばりん
13
地動説=永劫回帰説を、ジュール・ヴェルヌ読解に託して全面展開した本・・・といえば分かりやすいが、相当な難解さである。ヘルメスシリーズの『翻訳』と『分布』の間に出版され、セールの思想が大きく転回する激動を感じる。「アンティフェールの法則」と名付けられる中心喪失の方法が、本書独自の重要なテーゼであろうか。それ自体はオートポイエーシスと等価な論理だが、なぜオートポイエーシスのような想像力が産まれるのかをヴェルヌに託して説明しているという意味では相当な抽象度の内容であり、正直私には要約できる気がしない・・・2021/11/11
roughfractus02
7
夢は中心の拡張でなく中心の喪失だ。著者はヴェルヌ作品をSFジャンルから開放し、科学の夢から夢の科学に転換して科学と夢の相互参照(干渉、翻訳)の効果として扱う。地動説に始まる近代実証科学は夢の科学であり、そこではサイクルが点に点がサイクルに相互介入を繰り返すヘーゲルの夢(諸円の円:エンチュクロペディー)が乱舞する(アンティフェールの法則)。本書はヘラクレイトス的な永劫回帰の世界を描くヴェルヌ作品を「驚異の旅」と呼ぶ。プロメテウスは火を移動させただけだ。サイクルとしての火は火山を脱して熱い雲を作り、雲は・・・2024/08/22
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