出版社内容情報
デカルトを反射概念の形成者と仰ぐ判断は果して正当か? 厖大な史資料を実証的に辿り,歴史理性の精神分析を試みつつ明快に論証されるフランス科学認識論の古典。
内容説明
機械論的生理学者デカルトを反射概念の形成者と仰ぐ19世紀の生理学史家たちの判断は正当だったか、史的展開の論理的透明性を自明化する説明論者の虚構を拒絶し、歴史過程が本性的にはらむ逆説的非連続性の具体例を厖大な史料を検証し論証する科学認識論の古典。
目次
第1章 デカルト以前の筋肉運動を巡る問題状況
第2章 不随意運動を巡るデカルトの理論
第3章 トマス・ウィリスによる反射運動概念の形成
第4章 炎と燃える魂
第5章 無頭の動物と有機体の交感
第6章 ウンツェルとプロハスカ
第7章 19・20世紀における反射概念の沿革の歴史
補違 ウィリスのテクスト抜粋
感想・レビュー
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roughfractus02
8
18世紀以後、機械論を採用して成果を上げた生理学は、神経と筋肉の自動運動の説明で重視される機械論的な反射概念の始祖をデカルトに求めた。が、彼の著作を読み直しても反射の機械論的使用の跡は確認できないとした著者は、この概念がデカルト以後の生物学の遡及的論理によって作られた点に注目する。アリストテレスやガレノスの古代の神経や筋肉へのアプローチから辿り直す本書は、後の理論の文脈に移されて忘却される時代固有の内的論理を詳細に検討し、神経に番号をつけて随意・不随意運動を区別したトマス・ウィリスの反射概念を再評価する。2024/11/15