出版社内容情報
この未だ知られざる狂気と想像力に満ちた作家の,作品構成原理たるプロセデ(手法)を解き明かしつつ,迸り出る言語の奥底に隠された「言葉ともの」の関係を追求。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
ルーセルは言語の空白を描いた。短編では同音異義語を駆使して冒頭と末尾の文の意味を似て非なるものに二重化し、長編ではその手法を深く沈めて各所に謎を散りばめ、手法を探すよう読者に促すかに見える。『臨床医学の誕生』と同年(1963)に本書を上梓した著者はルーセルの謎を空白として示すこの手法から、見えるもの(可視性)が見えないものを要請し、両者が関係し合って言説が編成される点に注目した。ラング/パロールを基点とした言説の構造分析が駆使される本書だが、著者は後に見えないものが見えるものから作られる点に重心移動する。2024/12/15
兎乃
7
再読。2014/07/19
枕流だった人
0
旧装版のみ
pqrs
0
物の世界の豊かさは、言葉には転写できない。言葉はその存在の本質として不足しているのだ。しかし不足しているがゆえにこそ転写の試みに意義が生まれる。そのとき、作家は、刀鍛冶のするように、言葉を、矯めに矯め、言葉と格闘することを強いられる。それは精神病理として解読することは出来ない。それをする限り、我々は人間論の世界で安眠していることになる。 2010/03/23