内容説明
著者はこの道も、古代の道の延長線上にある、という思いを捨てかねていたが、改めて克明に取材すると、沿道に五千年の人の生活の痕跡があり、厚く積る歴史が重なっていた。一番興味深かったのが、甲斐の縄文人であった。甲斐は古代~中世~近世を通じてあまり活発な外部との交流がない。閉じられた国であった。今でも甲州の人々にはそういう意識がある。最も活発に外部と交流し、接触していた時代―開かれた甲斐が、縄文時代だったらしいというのが、意外性もあって面白い。甲斐源氏五百年、諏訪は『古事記』に現れる神の国だが、中世末は戦乱の道となった。覇権をめぐる武家の攻防は、この小冊子に書き切れないけれども、話題性の高い部分を摘記して、甲州道中沿いに繰り広げられた「歴史マンダラ」を探ってみた。それは本当に、立体的な曼荼羅の中を歩く印象であった。
目次
懐古の旅路 武蔵野と旅情の谷(新宿から府中へ―武蔵野の道;府中から八王子へ―坂東武者の夢の跡;小仏峠から藤野へ―美しい旅情の小道;上野原から笹子峠へ―峡谷の里・山の里;「立川~八王子点描」)
源氏の里と神の国 甲府盆地から諏訪へ(田野から塩山へ―武田家悲劇の地;甲府とその周辺―多彩な遺跡;韮崎から白州へ―甲斐源氏のふるさと;諏訪盆地―湯の里・神の国;「甲府~諏訪点描」)